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エネ庁 海底直流送電整備へ漁業実態を調査

 経産省エネ庁は、北海道と本州をつなぐ海底直流送電システムの整備に向けた取り組みの一環として、漁業実態調査を実施する。世界的に類例の乏しい、大規模な同システムの整備を検討する海域において、先行利用者である漁業者の活動実態に関する調査を行うことで、東地域電力系統での円滑な整備計画の立案、将来的な増強判断につながる知見を収集する。調査対象については、北海道後志南部から新潟県までの漁業者団体を想定しており、特に送電ケーブルへの接触が懸念される海底付近を曳網、または海底付近に敷設する漁業での使用漁船規模、漁労設備牽引力、使用漁具などについて、文献調査や聴き取り調査を実施する。
 洋上風力などの導入拡大が見込まれる、北海道などから大需要地まで、効率的に送電する長距海底直流送電システムの計画的・効率的な整備を加速するため、同庁は21年度から23年度の各年度補正予算を充当し「再生可能エネルギーの大量導入に向けた次世代型ネットワーク構築加速化事業」を実施。北海道~本州間の日本海側で、敷設の可能性があるエリアの沿岸において、曳航・採泥調査・海底ケーブルの揚陸などに関する調査を行い、技術的な敷設可能性を確認してきた。一方で、対象魚種や漁業種類の異なる多種多様な漁業が営まれている、国内周辺海域の漁業種類別漁業生産については、漁業協同組合単位での統計データがなく、使用漁具や漁労設備も、潮流や海底地形にあわせた地域的な特性が反映されている―と推測されており、同庁はこれまでの調査を踏まえ、海底直流送電の敷設可能性のあるルート周辺における漁労活動の実態を調査するもの。
 同事業に対しては、GX(グリーントランスフォーメーション)の実現に向けた重要な系統整備である点を踏まえて、北海道電力ネットワーク(NW)、東北電力NW、東京電力パワーグリッド、電源開発送変電NWの4社が連名で、昨年12月に実施案の応募意思を表明。一方で、現時点では未確定の技術面・事業面での要素があるため、実施案を作成するにあたっての課題解決を条件として設定し、今後、各条件の成立に向けて対応策を協議・検討する考えを示した。長距離海底ケーブルの敷設を含む、大規模プロジェクトでは、資金調達の規模が大きく、プロジェクトファイナンスが前提となる。国による追加海域実地調査や揚陸点の調査を今後反映する必要もあり、これらのリスク認識に基づいて、資金の調達・回収や、基本要件からの工事費・工期が変更した場合の扱いなど、事業の実現可能性の見通しを確保するための課題解決を、条件として設定している。