JAEA 事故耐性燃料の早期導入へ連携促進
日本原子力研究開発機構(JAEA)は、東京大学と共同で11日、国内でJAEAをはじめ、電力、プラントメーカー、燃料メーカーが一体となって、開発を進めている「事故耐性燃料(ATF)」に関するワークショップを開催し、ATF開発における関係者の連携を促進する。
燃料被覆管に用いるジルコニウム基合金は、腐食や照射損傷に対する体制が強く、十分な強度と延性を維持するなどの優れた特性を持っている。一方で、高温では酸化しやすく、水や水蒸気と反応して酸化物を形成するほか、水素を発生する、酸化反応に伴う発熱が大きい―といった特性もある。そうした特性を踏まえて、通常時の性能を維持・向上させると共に、事故時の事象進展を遅らせることで、水素発生量の低減が可能なATFの開発が、世界的に進められている。
原子力のさらなる安全性向上に向けて、様々な種類のATF開発が進む中で、原子炉の冷却材として使用される水が、配管の破断などにより失われ、燃料の温度が上昇する「冷却材喪失事故」などが発生した場合にも有効なATFとして、ジルコニウム合金被覆管表面にクロミウムを薄くコーティングした、燃料棒の早期導入が見込まれている。
来年にも少数体の先行照射を行い、その後30年以降に本格導入する計画を、原子力エネルギー協議会が22年に提示しており、少数体先行照射に向けてJAEAは現在、海外試験炉を活用した照射試験を実施。開発ステージの段階が、原理実証から工学実証に移行する中で、国内ATF開発における関係者の連携に向けた示唆を得ることを目的に、同ワークショップを開催するもの。ATF開発の状況、ATFの実現に向けた課題などをテーマとする有識者講演を行うほか、クロムコーティング被覆管を対象に、重要技術課題を解決するための研究開発や、導入に向けた効果的・効率的な枠組み・体制に関するパネル討論を実施する。会場は、東京都文京区のHASEKO―KUMAHALL。