エネ庁 支援強化など国主導で地熱導入加速
経産省エネ庁は来年度から、地熱発電の促進に向けた施策として、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)による支援体制を強化する。事業者が行う地表調査・坑井掘削調査は、特に地下リスクなどが高いため、助成金交付制度による支援を実施してきたが、従前より地元合意や許認可取得に時間を要するほか、近年では掘削費用の高騰などにより、十分な調査ができない状況も発生。そうした課題を踏まえて同庁は、支援拡充を図るため、来年度から同助成制度の枠組み・補助率を強化することを、このほど取りまとめた「地熱開発加速化パッケージ」に盛り込んだ。
具体的には、同制度における助成率の区分や率を再整理し、大規模案件を含めて広く案件組成を後押しする。地表調査については、高めの補助率を設定し、地域活性化の観点から、地元法人による開発案件は、補助率を引き上げる。掘削調査に対しては、自然公園における案件や地元法人による案件は、補助率を引き上げる。現在「原則6年、例外(延長)3年」としている助成期間は、事業化可能性判断までの支援を求める声を踏まえて、追加支援を実施。調査の進捗により、有望なポテンシャルが確認され、探査や開発ステージに進めるための追加調査が必要な案件には、さらなる支援を行う。近年の掘削費用の高騰や予算枠を踏まえて、今年度「1案件1本」としていた掘削本数に関しては、本数制限を撤廃することで事業の加速化を推進する。
地熱発電の導入量は現在、60万㎾に留まり、30年目標とする150万㎾の達成には、さらなる開発促進が必要な状況。そのため同庁は、現在調査段階の従来型地熱プロジェクト(計100万㎾弱)を着実に事業化につなげ、自然公園などのポテンシャルが高い有望地点の開発を推進すると共に、国内でまだ実装されていない次世代型地熱について、国内実証を通じた導入拡大を図る方針を提示。このうち従来型地熱については、今後を新たな「促進」フェーズと位置付けて、調査・開発中案件への支援強化を図る。
助成拡充のほか、民間企業だけでは着手しにくい、地熱ポテンシャルが有望な、自然公園などの未開発エリアの開発促進に向けて、JOGMEC自らが対象地域で初期調査を実施し、民間企業の参入を支援する「地熱フロンティアプロジェクト」を開始する。今後、JOGMECが複数の地熱事業を同プロジェクトとして選定し、選定したプロジェクト地域において、先導的資源量調査を実施。市町村や都道府県、地元住民などへの説明を主導し、全面的に支援することで、早期の事業化につなげる。建設コスト高騰への対応や規制・許認可対応についても、関係省庁・事業者・自治体によるフォローアップ体制を確立して取り組みを進め、全国的な横展開に向けて実績を積み上げる考え。