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能代市 風を活かした地域活性と課題を提示

 東北、中部、関西3電力などが出資するSPC(特別目的会社)秋田洋上風力発電が、大規模な商用の洋上風力として日本で初めて事業化した、能代洋上風力(8.4万㎾)が立地する秋田県能代市は、地域資源を活かした再生可能エネルギーの導入が、地域経済・産業の活性化に効果を上げている実状を示した。50年ネットゼロへの基本的な方向性を検討する、経産省の有識者会議で、自治体からのヒアリングに参加し、同市の取り組み、課題について説明した。
 海からの激しい季節風による飛砂に古くから悩まされ、昭和の時代には強風により、市街地の大部分を焼く火事が2度も発生した同市は、地域にとって厄介とされる「風」を、地域振興に活用するため、風力を中心とした「エネルギーのまちづくり」に早くから着手。01年には、東北電力グループの東北発電工業、ユアテック、東北緑化環境保全が合同出資する東北自然エネルギー開発が、大規模風力の先駆けとして能代風力(1・44万㎾)を運開した。その後、老朽化に伴うリプレースが行われ、21年に東北自然エネルギーが、新能代風力(1・61万㎾)と名称を改めて、新たに運開している。さらに22年には、大規模な商用の洋上風力として、国内初の能代洋上風力が運開しており、これらの風力を含めた同市内の風力は現在、陸上風力計31基、洋上風力計20基が設置され、計約14・8万㎾に達している。
 同市では、風力などの再エネの拡大により、産業振興・雇用創出が進むと共に、洋上風車タワーの工事が開始された22年年7月以降、全国各地の市町村議会や自治体が事務局を務める団体、学生の視察が増加。昨年度は、111団体、約1400人が視察に訪れ「地域経済への好影響は、洋上風力の建設やメンテナンスに留まらず、視察者の宿泊や飲食、交通、小売りなど様々な分野に及んでいる」(同市)。
 一方で、一定の産業振興が進み、各種普及活動を実施している同市においても「再エネ電力は首都圏に流れている」「風力発電立地に対する地域のメリットがない」「いつの間にか風車が建っているが、再エネについてよく分からない」といった市民の声があることを市は指摘。環境価値を地域に帰属させるためには、地産地消の仕組みづくりや、風力事業に対する市民の理解促進に向けた地道な普及啓発、分かりやすいメリットの提示が必要―と提言した。また、秋田県北地域の企業が、メンテナンスや治具などの関連産業へ参入し始めており、この動きをさらに加速していく必要があると共に、風車製造工場誘致については、大規模な市場が必要との話があり、ハードルは高い―との考えを提示。風力事業者とのさらなるマッチングの促進、風車製造に携わる国内外企業との連携・情報交換の必要性を示した。