エネ庁 近年の需給逼迫要因と対応策を整理
経産省エネ庁は、近年発生した需給逼迫時における主な要因と対応策を整理し、電力自由化以降の供給力の低下や、再生可能エネルギーの導入拡大などによって、電力需給の逼迫が発生している現状を示した。近年、供給力は減少傾向で推移していたが、直近の23年度は、火力のリプレースにより増加となった。他方で、今夏の最小予備率が4.1%となっている、東京電力パワーグリッドのエリアでは、トラブル停止のリスクが高い、運開から40年以上経過した老朽火力が、供給力の約1割を占めると共に、約3000万㎾の火力が東京湾岸に集注するなど、一定のリスクがある状況が継続していることを同庁は危惧。データセンターや半導体工場の新増設などによる、今後の産業部門における電力需要の大幅な増加を見込んで、エネルギー安定供給の観点から、脱炭素化と共に、火力の在り方を検討する。
このほど開催した基本政策分科会で同庁は、①20年度冬期、②22年3月、③同6月―に発生した需給逼迫について整理した。①では、継続的な寒波により電力需要が増加したところに、石炭火力のトラブル停止や天候不順による太陽光の発電量減少が発生。海外のLNG供給設備の停止などに起因したLNG在庫の減少により、LNG火力の稼働も抑制された。逼迫時には、自家発の焚き増しをはじめ、電力各社は電力融通、連系線の運用容量拡大で対応した。
真冬並みの寒波の中で、福島県沖地震が発生した②では、地震などによりJERAの広野火力(計180万㎾)やJパワーの磯子火力(計120万㎾)などが停止。東京―東北間の送電線運用容量が500万㎾から250万㎾に低下したほか、月内で最大1257万㎾の太陽光の出力変動があったことも判明した。また、平年より大幅に早い梅雨明けとなった③では、複数の火力が補修点検により稼働停止する中、6月末時点で異例の暑さにより需要が大幅に増加した。これらの事態においては、火力の出力増加、電力融通に加えて、小売り電気事業者から大口需要家への節電要請を行うと共に、電力需給逼迫警報・注意報を発令。その後の対応として、発電所の休廃止に関する事前届け出制や、今夏の初回募集を予定する予備電源制度を導入している。
緊急時の供給力を確保するため、一定期間内に稼働が可能な休止電源を維持する枠組み、予備電源制度について同庁は、初回募集の準備を加速する。休止中または休止を予定する10万㎾以上の火力のうち、容量市場において2年連続で落札できなかった電源から選定し、休止状態の維持や修繕の費用を手当てする。調達量は合計で300万~400万㎾程度とし、東西の2エリアで募集。制度適用期間は最大3年間。託送料金により費用を負担すると共に、電力広域的運営推進機関で調達などのプロセスを実施する。短期(3か月程度)で立ち上げが可能な電源と、長期(1年程度)で立ち上げを行う電源に分けて募集する。