エネ総研 リスク特性踏まえた廃止措置規制
エネルギー総合工学研究所の原子力発電所廃止措置調査検討委員会(委員長=岡本孝司・東京大学大学院工学系研究科教授)は、原子力の効率的・円滑な廃止措置に向けた技術レポート「廃止措置プラントのリスクレベルに応じた規制のあり方について」を作成した。廃止措置が進む米国での廃止措置規制の改善に向けた取り組みに関して、これまでに実施した調査結果や、国内での取り組み状況との比較などを踏まえて、〇廃止措置作業のリスク特性に合わせた安全確認、〇廃止措置プラントの緊急時の対応―に関して、具体的な取り組みを検討し、提言として取りまとめた。
同提言では、運転中に比べてリスクが格段に低く、進捗により放射線安全から労働安全へとリスクの特性も徐々に変化する、廃止措置の特性を提示。管理可能なわずかなリスクの増加に対して、必要以上の規制リソースを投入することによる、廃止措置工程の不要な長期化は避けるべき―と指摘した。その上で、廃止措置におけるリスク特性を踏まえ、どのような不安全状態に対して、いつどのように規制が介入すれはよいか―といった、規制の妥当性を考慮すると共に、認可・報告の対象と、審査・承認のレベルを整理し、廃止措置計画の記載事項を最適化することを求めた。
緊急時対応については、全ての使用済み燃料が敷地外に搬出された状態では、放射線による緊急時対応が必要な状況は想定されないため、国際原子力機関(IAEA)の脅威カテゴリーの「限定」と見做して、減災法の規定に基づく「原子力事業者」からの除外を行う。使用済み燃料が十分に冷却された状態では、緊急時防護措置を準備する区域(UPZ)の設定は不要とし、原子力事業者防災業務計画における施設敷地緊急事態に該当する事象(SE)、全面緊急事態に該当する事象(GE)の設定を求めない―などの対応により、周辺住民が廃止措置プラントのリスクが十分に小さいことを適切に認識することができる―とした。
経産省の原子力小委員会自主的安全性向上・技術・人材WGでの議論を基に、官界、産業界、学術界、学協会など関係者間の役割りを明確化した「軽水炉安全技術・人材ロードマップ」が15年に作成され、その後定期的に見直しが行われており、エネ総研は、産学官が一体となった取り組みが、廃止措置での諸課題の解決にも重要―と判断。原子力の廃止措置を円滑に進めるための課題解決に向けて技術的な検討を深めると共に、検討成果をもとにステークホルダーとの議論・共有の橋渡し的な役割りを務め、社会に貢献することを目的として、18年に同検討委を設置した。