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NEDO 電力SY柔軟性確保へ日本版C&M2.0

 NEDOは来年度から、電源の「統合コスト」低減に向けた、電力システムの柔軟性確保・最適化のための技術開発事業「日本版コネクト&マネージ(C&M)2.0」を開始する。再生可能エネルギーの導入を進めるにあたっては、系統制約を解消すると共に、電力系統に接続するための統合コストを抑制することが喫緊の課題となっている。そのため、一定程度の時間とコストを要する、系統の増強と並行しながら既存系統を最大限に活用する「日本版C&M1.0」の取り組みが進められており、NEDOはこれまでに、送電線混雑時の出力制御を条件として新規接続を許容する「ノンファーム型接続」の実現に向けて、制御システム開発を実施。また、経産省エネ庁と電力広域的運営推進機関を中心に、広域連系系統のマスタープランの策定や、長距離直流送電の具体的なプロジェクトが検討されている。
 さらに今後は、再エネの早期導入に加えて、エネルギーコストや一般負担を可能な限り抑えることを目的とした取り組みが求められるのを踏まえて、NEDOは、発電・送電・配電での分散型エネルギーリソース(DER)の活用などを通じて、電力システムの柔軟性(フレキシビリティ)を確保・最適化する、日本版C&M2.0に取り組むもの。具体的には、①DERなどを活用したフレキシビリティ技術開発、②市場主導型制御システムの技術検討、③バイオマス発電・水力発電・地熱発電の柔軟性向上のための技術検討―を一体的に行い、システム全体での最適化を目指す。
 NEDOはこのほど、同事業の実施者公募を開始しており、来年度から28年度まで5年間にわたり、同事業を推進する。①の研究開発では、実証試験などを通じて、平常時の混雑緩和や出力制御量の低減や事故時の安定度確保につながる新たなDERなどの活用手法に関する基盤技術と、システムの標準仕様を確立する。②では、混雑管理などの制度設計の議論状況を確認しながら、28年度末までに市場主導型制御システムの要素技術に関する検討を完了する。また、FSによりバイオマス、水力、地熱の柔軟性を評価・分析する③の研究では、柔軟性の向上に関する技術要件・要求仕様、検証項目などを具体化し、技術開発が必要と判断した場合には、改めて開発事業者の公募を行う見通し。
 なお、国際エネルギー機関(IEA)は、太陽光や風力などの変動性再エネの導入割合や、電力システムの状況に関して、6つの運用上のフェーズを定義している。IEAの試算では、30年時点でドイツ、イタリア、英国、アイルランドなどの欧州各国は、フェーズ4(変動再エネを大前提とした系統と発電機能が必要)~5(変動再エネの供給が頻繁に需要を上回り、交通や熱の電化による柔軟性確保が必要)に、日本をはじめ米国・中国などはフェーズ3(出力制御が起こり、柔軟な調整力や大規模なシステム変更が必要)に位置する―としている。さらに、経済協力開発機構(OECD)は、変動性再エネの接続割合が増えることに伴い、統合コストも上昇する―と試算しており、電力システム全体での周波数維持、熱容量の確保、電圧安定性(日本は同期安定性)に関する技術開発を各国が進めている。