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中部電と関西送配電 JICA事業で初協業

 中部電力と関西電力送配電は来月より、バングラデシュ人民共和国において、同国の新規開発計画となる「配電マスタープラン」を策定する国際貢献プロジェクトを開始する。世界の最貧国として知られた同国は現在、堅調な経済成長に伴って近時10年で電力需要が2.3倍に急増しており、中でも経済活動の中心地であるダッカ都市圏は、全国の需要の4割近くを占めており「今後さらに需要が伸びる」(バングラデシュ電力エネルギー鉱物資源省)と予想されている。一方、同国政府は、気候変動対策の一環として再生可能エネルギーのシェア拡大を進めており、現時点では、ダッカ市全体の電力需要に対する再エネ導入量は「限定的で、配電系統への影響や課題は顕在化していない」(同)ものの、今後も再エネの導入が進むことは必至で、近い将来、系統への逆潮流の発生や電圧のばらつきによる電力品質の低下、さらには供給信頼度のダウンなどが懸念されている。
 加えて、同市を含むダッカ都市圏を管轄する配電会社の技術レベルも「改善の余地がある」ことから、同国政府はこのほど、日本政府に対して「低炭素社会実現のための配電マスタープラン策定への支援」を要請。これに応えて、新たなJICAプロジェクトとして、2電力と八千代エンジニヤリングに委託して、来月より同事業を開始するもの。
 3社は、関西送配電を代表企業に「ダッカ配電マスタープラン策定プロジェクト共同企業体」を組織。来年度上期中に予定する現地調査などによって、ダッカ都市圏における再エネの大量導入と安定供給との両立を見据えた配電マスタープランの策定と、担務会社となるDESCO(ダッカ電力送配電会社)など2社の社員を対象にした、研修による資質向上によって配電網運用能力の底上げを図りながら、策定したマスタープランに基づく個別政策への支援を、27年2月末(予定)まで行う。さらに今回のプロジェクトでは、事業遂行にあたって「ジェンダーバランスに特に留意する」(JICA)方針で、事業の一環として、中部電と関西送配電が日本国内で実施する国際研修の際には「女性技術者・職員の参加を奨励して女性の活躍を促進する」ことで、多様性という概念の周知と普及にも貢献する。
 バングラデシュにおいてはこれまで、東京電力ホールディングスと東電設計が「電力マスタープラン改訂に係る情報収集・確認調査」(14~16年)、Jパワーが「南部チッタゴン地域の総合開発プロジェクトに関する情報収集・確認調査」(15年)、関西電力が「火力発電所運営・維持管理能力向上プログラム」(19~20年)、東電設計が「マタバリ超々臨界圧石炭火力発電建設事業準備調査」(20~21年)などを、JICAの委託を受けて行っている。なお、中部電と関西送配電によるJICA事業の共同受託は初となる。