九州電 社有林管理で生物多様性の保全推進
九州電力は、社有林の管理を通じて、生物多様性の保全を図る取り組みを推進する。同社が定める社有林管理方針の基本理念「水と命をはぐくむ『みらいの森林(もり)』を子どもたちの未来へ」の下で、「環境に優しいエネルギーを支え、人と生き物とが共存する豊かな社会に貢献する、健全な森林形成」に取り組んでおり、このほど、大分県平治岳周辺に位置する社有林(401・34 ha)が、環境省から「自然共生サイト」として認定された。同認定制度は、民間事業者や地方公共団体などの様々な取り組みにより、生物多様性の保全が図られている区域を国が認定する制度として、同省が今年度新設。30年までに陸と海の30%以上を、健全な生態系として効果的に保全する「30 by 30(サーティ・バイ・サーティ)」の目標達成に向けた取り組みの一環となるもので、同省はこのほど、初めての認定エリアとして、35都道府県に所在する全国122か所を決定した。
九州電が同認定を受けた、大分県竹田市の社有林エリアは、全域が阿蘇くじゅう国立公園内にあり、同県レッドリスト準絶滅危惧に指定されるミヤマキリシマが山肌を覆う景観を有している。一方で近年、この植物が減少傾向にあり、環境省、地元団体と共に九州電グループは、ボランティア活動による保全を実施。保全林として間伐などの森林施業を行わずに原生的な森林を維持するほか、管理責任者である九州林産が「水源涵養林管理事業における生物多様性保全ガイドライン(GL)」を作成し、同GLに沿ってミヤマキリシマのモニタリングを行っている。さらに、地元保護団体や環境省と協議し、ノリウツギの伐採によりミヤマキリシマの減少を回避する保全活動に取り組んでいる。
なお、自然共生サイトには、東京電力ホールディングスが申請した群馬県片品村の「尾瀬(尾瀬ヶ原・尾瀬沼・尾瀬戸倉山林、東京電リニューアブルパワー所有)」も認定を取得。尾瀬ヶ原の木道整備をはじめ、日本で初めて実施されたごみの持ち帰り運動、山小屋や公衆トイレの浄化槽設置、尾瀬戸倉の計画的な森林管理など、同社が60年にわたって取り組んできた自然保護活動が、生物多様性保全につながる取り組みとして改めて評価された。また尾瀬国立公園は、同じく環境省が、脱炭素化に取り組む国立公園として認定する「ゼロカーボンパーク」にも登録されており、国内外の人へ、カーボンニュートラルをアピールする場を目指して同社は、同省、片品村と協議検討を進めている。