中部電 フレイルリスク検知サービスが拡大
中部電力が、グループ企業の合同会社ネコリコを事業推進部門に、三重県東員町で20年から行ってきた実証実験の成果を基に、23年度から同町で、スマートメーターを用いた高齢者向け福祉サービス「AIと電力データを活用したアウトリーチ型フレイル予防事業」がスタートすることになった。既報のように同事業は、中部電が「暮らしを便利で快適にするIoTプラットフォームの提供」を目的に、18年に設立したネコリコが、東京大学、同大発スタートアップのJDSC(東京都文京区)と共同で考案した新機軸の保健推進プログラムに基づくもの。同実証では、東員町内の単身高齢者30世帯の居宅に設置したスマートメーターとセンサーから得られた電気使用量のデータをAIで解析して、住民が「介護が必要となる前段階となるフレイル(虚弱状態)であるか否か」を判定。フレイルと判断された者に対して、適切な指導を行うことで「健康に長生きできる高齢者を増やす」(町健康長寿課)ことを目的に行った。
ネコリコなどがこれまでに行った実証が「8割近い判定精度を示した」(同)ことから町は、サービス対象を町全域に広げることを決め、4月以降、町内の一人暮らし高齢者800人に「スマートメーターのデータ提供について協力を要請する」という。ネコリコは、電力使用実績データを活用したフレイル検知の実証を、千葉県市原市でも昨年4~12月に実施したほか、長野県松本市では、中部電も実証に加わって昨年5月~来月末まで行っており、東員町の取り組みは今後、全国的な行政サービスとして普及しそうだ。なお、ネコリコは、明治安田生命と21年に交わした共同研究契約に基づいて、同町において昨年、電力データによるフレイルリスク検知技術と、生保の営業職員の訪問活動とを組み合わせた「フレイルの早期検知・予防のためのスキーム開発に向けた実証」を実施。実証で得られた知見などについて、25日に町の総合文化センターで発表した。