千葉市 TNクロスとPPAで避難所機能強化
千葉市は、20年に策定した「災害に強いまちづくり政策パッケージ」に基づく取り組みの一環として進める、市内公民館・市立学校などへの太陽光設備と蓄電池導入について、今年度中にも対象とする市有施設の約8割へ導入を完了する見通しを示した。同パッケージは、19年度の台風15号・19号などの発生により、最大約10万軒に及んだ大規模長期停電をはじめ、停電に伴う通信障害・断水や、がけ崩れによる犠牲者の発生、広範囲での冠水といった多様で甚大な被害経験を教訓に、災害に強いモデル都市の実現を目指して策定。電力の強靭化など5つの柱に基づいて、風水害に伴う被害の発生予防や、発災時に備えた支援・復旧体制の構築に向けた取り組みの方向性を打ち出したもの。
このうち、電力強靭化施策の具体的な取り組みとして、東京電力ホールディングスとNTTの折半出資により、18年に設立されたTNクロスと連携し、災害時の避難所となる公民館や学校計182か所への、太陽光と蓄電池導入を目指して、20年度から取り組みを進めてきた。停電時にも空調や照明を使用できる、避難所指定施設としての機能を強化するもので、環境省の補助金「地域の防災・減災と低炭素化を同時実現する自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業」の活用や、TNクロスによるオンサイトPPA事業との官民連携により、市の追加負担をゼロとしたのが、政策パッケージにおける取り組みの中でも大きな特長。
太陽光や蓄電池の導入にあたってTNクロスは、設置場所の学校、公民館の構造を入念に調査して標準モデル化することで、建物ごとにカスタムするコストを削減。設備調達も一括でできるようになり、設備費も大幅に削減した。一方で、同事業の担当課は市環境保全課、学校の施設管理は市教育委員会、防災対策は市危機管理課、公民館もそれぞれ担当部署があるなど、設置にあたっての課題が山積。市内には都市部、農村部、工業地帯、住宅地があり、災害時のニーズが異なる―といった課題もあり、「市の環境保全課が主導して窓口を一本化した」(秋山智博・同課温暖化対策室長)ことで、全庁を挙げた取り組みが実現した。
近年、全国各地で頻発する自然災害を踏まえて市は、「同事業モデルは全国の自治体で展開できる」(秋山室長)と指摘。環境省が脱炭素ロードマップに掲げる「脱炭素ドミノ」の一例として、「市の小さな取り組みが大きなうねりとなって他自治体にも波及していけば、全国的な電力の強靱化、二酸化炭素削減が期待できる」(同)としている。