北海道、東京、中部、北陸電が地域脱炭素推進
北海道電力、東京電力パワーグリッド(PG)、中部電力、北陸電力の4社がそれぞれ提案した、地域の脱炭素化に向けた取り組みが、地域特性に応じた「脱炭素ドミノ」へのモデル事業として、環境省の採択を受けた。50年のカーボンニュートラル(CN)を目指して、国が掲げるCO2削減目標を達成するには、国と地方の協働・共創による取り組みが必要不可欠―とされている。内閣官房長官を議長とする国・地方脱炭素実現会議が昨年6月に策定した「地域脱炭素ロードマップ」は、少なくとも100か所の「脱炭素先行地域」において、25年度までに地域特性などに応じた脱炭素への先行的な取り組みの道筋を付けた上で、30年度までに実行することを示しており、電力4社は地方自治体と連携して、脱炭素先行地域としての取り組みを推進する。
北海道電は、北海道ガス、北海道大学などと共に、札幌市で積雪寒冷地モデルの構築を目指す。寒冷地の特性を踏まえて、コジェネレーションシステムを活用した、エネルギーネットワークの構築を進める札幌都心地域の民間施設群をZEB化し、太陽光導入を促進すると共に、熱供給源として、CNガスへの切り替えにより電力・熱の脱炭素化を推進。水素モデル街区では、定置式水素ステーションを整備して燃料電池トラックの運用実証を行う。さらに、招致活動中の30年冬季オリンピック・パラリンピックでは、利用予定施設にZEBを導入すると共に、大会期間中の輸送には、ゼロエミッション車(ZEV)を活用する考え。
東電PGは、栃木県宇都宮市と同県那須塩原市、神奈川県小田原市において、脱炭素モデル都市の構築を図る。宇都宮市では、東京ガスネットワークなどと共に、市が進める「ネットワーク型コンパクトシティ」構築の先行的エリアであり、23年8月に開業予定の路面電車(LRD)の沿線に、太陽光や蓄電池を導入して自家消費を推進。地域新電力・宇都宮ライトパワーによる再エネ一括調達と大規模蓄電池を活用したエネルギーマネジメントを行うと共に、LRTへの再エネ電力100%供給を目指す。また、EVバスのエネルギーマネジメントシステムを開発して、同バスを調整電源としても活用するなど地産地消を促進する。
酪農業が盛んな那須塩原市青木地区では、自家消費型太陽光・蓄電池のほか、那須疏水を活用した小水力、家畜ふん尿を活用したバイオガス発電といった、未利用資源を有効活用した多様な再エネ電源を導入し、脱炭素化の実現を図る。小田原市では、市の中心部である小田原駅東口エリアと、同駅に近い生活拠点である久野地区生活拠点エリアに、カーポート型などの太陽光・蓄電池を最大限導入。地域需給バランス・取り引きシステムを構築し、既存のバーチャルパワープラント技術を活かして配電網レベルの系統混雑を未然に防止するなど「エネルギーと地域経済の好循環」のための基盤づくりを通じて、市街地の活性化を図る。
中部電は、長野県飯田市で「既存配電系統を活用した地域マイクログリッドによる人をつなぎ地域をつなぐまちづくり」を進める。名勝「天龍峡」などの観光資源を擁し、交通の拠点で利便性が良い川路地区内にある戸建住宅、商業施設と、市内全小中学校に太陽光・蓄電池を設置して自家消費を促すと共に、既存のメガソーラーと配電系統を活用した地域マイクログリッドを構築。また、全小中学校への環境教育・地域学習を通じて、脱炭素社会の担い手を育成することで、脱炭素化の取り組みを市内全域に展開する。
北陸電は、24年春予定の北陸新幹線金沢駅・敦賀駅間の開業を契機に、福井県敦賀市で「脱炭素化へのパラダイムシフト」を進める。新幹線開業の象徴的エリアとなる敦賀駅西地区、中心市街地集客施設、シンボルロードなどへ、卒FITの太陽光や、新設予定のごみ発電による再エネ電力を供給。同市、福井銀行と「敦賀市脱炭素マネジメントチーム」を結成して、省エネ要請による需給調整や、環境意識の高い事業者への融資・補助一体型支援などを行って、中心市街地全体へ脱炭素化の取り組みを波及拡大させる。