北陸電 クマ検知通報システムを魚津市が導入
北陸電力が独自開発した、クマなどの害獣を対象にした「自動検出AI・通報システム(Bアラート)」が、富山県魚津市に今年度より導入されることが決定した。同社の新価値創造研究所が開発した同システムは、コンパクトな通信機能付きカメラとAI搭載小型パソコンとで構成する情報通信機器。樹木に取り付けたカメラが、付帯するセンサーで動物の熱を感知すると自動的に撮影を開始し、画像を自治体などに設置したAI搭載パソコンに自動送信すると共に、AIが被写対象はクマである―と判断した場合には、有害鳥獣捕獲隊員や警察・消防などの関係機関にメールで通報する―というもの。既報のように北陸電と北陸電力送配電は昨年9~12月、富山、高岡、魚津、南砺、氷見の県内5市の「過去にクマの目撃情報や被害のあった計22地点」にカメラを設置し、実用性を探る実証実験を実施した。
その結果、実証期間中に計1万5360枚の写真を撮影し、そのうちの34枚を、タヌキなどと区別してクマと認識、市に通報した。検証の結果、正答率は99・9%の高い精度を誇り、システムの優秀性が確認されたことから魚津市は、獣害防止対策の一環として同システムの導入を決めたもの。現在、クマの出没を知らせる行政サービス(ホームページでの緊急速報)は「目撃者からの連絡に基づくため、発見から1時間以上かかる」(県自然保護課)が、同システムにより、自治体や警察は発見から通報までわずか5~10分で出没情報を把握できるため「住民避難や駆除が速やかに行えると共に、担当者の負担軽減にもつながる」(同)と同システムを高く評価する。そのため魚津市に続いて高岡市も、今月末から半年間、同システムの実証を再度行った上で「来年度の導入を視野に入れている」(市産業振興部農業水産課)という。こうした反響に応えて北陸電は今後、対象動物をニホンザルやイノシシにも拡大して実証を重ね、汎用性の高いシステムの開発につなげる考えだ。 林業の不振や地域の過疎化・高齢化、里山の荒廃によりクマやイノシシなどの害獣被害が全国的に拡大していることから、北陸電の同システムは今後、注目を集めそうだ。