環境省 九電みらい実証から潮流発電商用化へ
環境省は、九電みらいエナジーが実施した実証成果を踏まえて、来年度から潮流発電システムの商用化に向けた取り組みを本格化する方針を固めた。再生可能エネルギーの中でも、天候に左右されずに発電量を予見できる、潮流発電技術の特色を活かした具体的なビジネスモデルを構築し、技術的な実用化を達成することで、潮流発電事業の商用化を目指す。排他的経済水域世界第6位の海洋国である日本が、大きなポテンシャルを有する海洋再エネのうち、特に潮流発電は一定した潮汐力により、年間を通じて安定した発電が可能で、系統に与える影響が小さいなどの利点があり、海峡・瀬戸内海を中心として適地が存在する。
同技術に期待する同省は、九電みらいエナジー、長崎海洋産業クラスター形成推進協議会などで構成するコンソーシアムに委託して、19年度から昨年度まで、長崎県五島市で実証事業を実施。気象の影響を受けない発電実績が確認できたことから今後は、長期運転や低コスト化に向けた課題をクリアして、普及に向けた道筋をつける必要がある―と判断した。新たに「潮流発電による地域の脱炭素モデル構築事業」を設けて、高効率化による発電コストの削減、他の再エネとの組み合わせによる離島事業モデルの構築、潮流発電機を複数台設置したファーム化の経済性検討などに取り組む考えで、来年度概算要求で6.5億円を計上した。
なお、九電みらいエナジーは同実証において、国内初の大型発電機(500㎾)を今年1月に五島市奈留瀬戸沖の海底(水深40m地点)に設置。英国北部で世界最大の商用潮流発電事業(1500㎾×4機、現在増強工事中で将来的には40万㎾の計画)を実施中の、SIMEC ATLANTIS ENERGY社製の発電機を採用し、施工・撤去の確認や、発電状況の確認などに取り組んだ。一方で、同事業に親しみを持ってもらうため、奈留島内の小中高生を対象に、同発電機とクラゲをモチーフにしたキャラクターのネーミングを募集するユニークな取り組みも実施。同募集には多数の応募があり、その中から発電機は「なるミライ」、キャラクターは「なるくらげ」に決定している。