経産省 電力の人材活用視野にサイバー事故調
経産省は、発電所などの重要インフラにおけるサイバー事故調査について、体制整備に向けた検討を開始した。サイバー攻撃の高度化・激化が進む中で、サイバーインシデントの観点から原因究明を行う、いわゆる「事故調」の機能を整備することが求められており、産業界のサイバーセキュリティ対策を推進する同省は、情報処理推進機構(IPA)の産業サイバーセキュリティセンターを通じて、25年度を目途にサイバーインシデントに関する事故調機能を整備する方針を固めた。具体的には、プラントなどで事故が発生した場合に設けられる、警察や消防など国の事故調査委員会が、対象とする事故がサイバー攻撃に起因するものかどうか―の調査を依頼できる「サイバー事故調」を設置。同組織が攻撃の有無、侵入経路、対応策といったセキュリティに関する調査を担うことを想定しており、同省はこのほど開催された産業サイバーセキュリティ研究会において、同体制の整備に向けて、事故調査に必要な能力、体制、人材などに関する議論を開始したことを明らかにした。
一方で、同取り組みの中心となるIPA産業サイバーセキュリティセンターは、セキュリティの観点から企業などの経営層と現場担当者をつなぐ中核人材を対象とした「中核人材育成プログラム」を推進しており、これまでに電力などから計275人が同プログラムを受講。同プログラムは、社会インフラ・産業基盤のサイバーセキュリティ対策の強化をテーマに、情報・制御システム、マネジメント、ビジネス分野の技術を1年程度のトレーニングにより総合的に習得させるもので、電力からの同プログラム修了生は全体の23%を占めている。これらの同センターによる取り組みの成果を踏まえて同省は、新たな調査組織の検討につなげる考えで、修了生の活用も視野に議論を進める。