経産省 安定供給で原子力の技術自給率に注目
30年に向けたエネルギー政策の在り方について検討を進める経産省は、エネルギーの安定供給を確保するための取り組みとして、原子力などのエネルギー技術自給率が高い分野の維持・強化が重要―とする考えを示した。このほど開催された有識者会合において、今後のエネルギー政策には「3E(エネルギーの安定供給、経済効率性の向上、環境への適合)」の中でも、安定供給の確保が最重要であることを改めて指摘。世界をリードする脱炭素技術の開発、機器製造などを安定的に行うためにも、海外からのエネルギー源、エネルギー機器・技術などの安定供給と共に、国内におけるエネルギーの安定供給に加えて、エネルギー技術の維持・確保が重要であることを指摘した。このうちCO2削減につながるエネルギー分野の低炭素化・脱炭素化技術については、分野によって自給率に偏りがあることを提示。世界シェアでトップ3に入る国内技術として原子力、高効率火力、蓄電池、燃料電池自動車を挙げ、これらの分野における取り組みの強化が不可欠―との考えを示したもの。
エネルギー分野の低炭素化技術の中でも、高い世界シェアを誇った太陽光パネルは現在、輸入に依存する割合が拡大。10年に87・3%を占めた国内生産比率は、19年度に17・1%まで縮小した。一方で、現在運転中の原子力については、三菱重工業・アレバ(仏)が世界の20%(基数ベース)を占めてトップ、次いでウエスチングハウス(米)16%、3位に日立製作所・GE12%、東芝は3%で7位に入っている。国内における原子力についても、導入当初は海外からの機器輸入割合が高い傾向にあったが、70年代以降に営業運転を開始した原子力は、多くで国産化率が90%を超えている。こうした現状に対して同省は、原子力は国内企業の技術が集積されていることを重視。プラントメーカー3社をはじめ、原子力特有技術を保有する400以上の企業、約1000万個の部品といった、サプライチェーンを国内に確保する原子力産業は、新型コロナウイルスの拡大により、サプライチェーンの国内回帰の声もある中で、強みを持つ分野であることを指摘すると共に、エネルギーの安定供給といった観点からも強化が必要―との考えを示した。