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東北電 ILC誘致で岩手県と新たな取組を開始

 東北電力は、次世代型直線型加速器として知られる「国際リニアコライダー(ILC)」の岩手県北上山地への誘致に向けて、建設候補地の県や地元市町村と新たな取り組みを開始する。ILCは、電子とその反粒子である陽電子を超高エネルギーで正面衝突させ、宇宙の始まり(ビッグバン)から1兆分の1秒後の状態を人為的に再現できる素粒子物理学の実験装置。地下100mに敷設する全長20㎞の直線型超伝導加速器と、地上に設ける衝突点研究棟や検出器関連設備で構成する巨大設備で、国際協力によって建設地を決定の上「20年代に着工する」(文科省)ことが決まっている。国際間調整を経て決定する建設費は、7355億~8033億円と試算されており、このうち、本体建設費は5800億円(うち土木建築工事費1300億円、加速器本体4500億円)を見込むビッグプロジェクトだ。
 東北電は「ILCは地域経済の進展に加え、日本や東北地方が人類全体の学術振興に貢献できると共に、将来の子供たちへの大きな財産となる」との判断から、東北送配電サービスやユアテック、東北発電工業、東北緑化環境保全、東北開発コンサルタントなどと共に、誘致推進組織「東北ILC推進協議会」に参加し、東北各県や各自治体、東北大学など10学術機関、東北経済連合会、さらに東電設計、きんでん、日立製作所、東芝、大手ゼネコンなど200社と共に、ILCに関する理解促進活動や講演会・セミナーによる周知・広報、調査研究などを積極的に行っている。
 こうした取り組みが奏功し、ILCの建設地について、欧州原子核研究機構は、今年6月に策定した次期「欧州素粒子物理戦略」の中で、日本のILC計画を「同戦略に適合する」と評価し「適切な時期に実現する場合は協働を望む」との見解を明らかにした。これを受けて、各国の加速器研究所所長で組織する国際将来加速器委員会が、茨城県つくば市にある文科省所管の「高エネルギー加速器研究機構」内に、日本における活動拠点となる国際組織(チーム)を、今月中を目処に発足させる方針を表明。そのため、ILC推進協は、これまで国内誘致の準備活動を担務させてきた下部組織の「東北ILC準備室」を「当初の目的を達成した」(同協議会)ことから、発展的解消すると共に、後継組織として、県や地元自治体と共同で、ILC受け入れに必要となるインフラやまちづくりなどの環境を整備するための調査・検討を主導する「新しい官民組織を今週中に発足させる」(県ILC推進局)ことになったもの。同取り組みにおいても東北電は、自社グループが有する豊富な知見と技術を提供し、つくば市の国際チームとも連携しながら、建設地周辺の整備に支援・協力していく考えだ。