厚労省 高齢者の見守りで電力などと協力検討
厚労省は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、全国の自治体に対して「高齢者に対する見守りの強化」を図るよう要請した。コロナ禍による外出自粛が長期化したことから、全国に680万人超いる1人暮らし高齢者が体調を崩す例が多数報告されており、同問題への対応を進めるもの。同省は、〇自粛に伴う運動不足による持病の悪化、〇人と会話できないストレスに伴う不眠や食欲不振、〇(前記理由による)筋力の低下によるフレイル(要介護手前の虚弱状態)者の増加―が、全国大で拡大していることを危惧しており、外出自粛要請の下でこれまで活動を中止していた、民生委員や地域住民による個別訪問を再開した。
しかし、現場を担う民生委員自身の高齢化や人手不足もあって「これまでと同じ官のみのスキームでは限界がある」(同省)ことから同省は、電力やガス事業者がサービスの一環として行っている「地域見守り活動」と、官主導の高齢者の見回りとの連携、または協業の可能性などについて、検討を進めていく考えだ。電力・ガス事業による同取り組みは、両事業が有する「地域に密着した事業形態」の特性を活かして、自治体や関係団体と協定・覚書を締結の上、自社エリア内の地域ネットワークに参画して、地域の見守り活動や防犯活動などに協力する―というもの。例えば九州電力の場合、九州7県の計110超の市町村と見守り活動に関する協定を交わして、①高齢者等の見守り活動、②「子ども110番」活動、③防犯、安全・安心の見守り活動―を展開しており、このうち①については「17年度の1年間で九州全域で20件の通報を行った」(同社)という。
具体的な救済事例としては「委託検針員が検針業務中、敷地内の裏庭で年配の男性契約者に、検針のお知らせ票を手渡した際の異常な発汗と顔色の悪さから、熱中症の疑いがある―と判断。本人の了解を得て救急車を手配した結果、検査入院で済んだ」(同)という。厚労省はこうした事例を踏まえて、コロナ禍後の「新しい日常」における高齢者の見守りの在り方について、電力との連携・協力を視野に入れた官民共同の取り組みを積極的に進めて行く考えだ。