内閣府 電力を迎えて官民共同で降灰対策推進
安倍晋三・首相が会長を務める政府の中央防災会議は、電力を委員に迎えた「大規模噴火時の広域降灰」に備えた新たな検討会を立ち上げて、同会議のWGがこのほどまとめた報告書「大規模噴火時の広域降灰対策について~首都圏における降灰の影響と対策」で浮上した、富士山噴火による火山灰降灰に伴う電線の切断や火力の停止などのリスク対応策について検討を開始する。有識者を中心とする「大規模噴火時の広域降灰対策検討WG」がまとめた今回の報告書は、最悪のケースとして「西南西の風が強く、雨が降っていた場合」の被災程度を詳細に推定。その結果、噴火3時間後で都心の大部分が停電し、降灰が継続する15日後には、停電が東京、神奈川全域と千葉、埼玉の一部にまで拡大する―とのシミュレーション結果を明らかにした。また、停電に至る具体的な「火山灰の堆積厚」についても分析。降雨の場合は、火山灰が0.3㎝で碍子の絶縁低下によって停電が発生。3㎝になると、吸気フィルターの交換頻度の増加によって火力の発電量が低下し、さらに10㎝で、倒木による電線の切断によって停電被害が拡大する―という。
そのほか「堆積厚によらない影響」として、視程(肉眼で確認できる最大の距離)の低下による、長期間の船舶の運航禁止に伴う火力燃料の枯渇―も、想定されるリスクとして指摘した。こうした現状を踏まえて委員からは「噴火に伴うライフラインの支障に関する影響を、平常時から分かり易く都県民に周知・広報する必要がある」「被災時の情報提供についても、ライフライン事業者を交えて、被害状況や復旧見込みをどのように情報発信するか―を検討する必要がある」などの意見が出されたことから、これまでは事業者ごとに検討を進めてきた噴火対策をインフラ事業全体に拡大して、電力のほか、鉄道・道路事業者を迎えた検討会を早急に創設して、今年度より官民で具体策の策定に向けた検討を開始するもの。検討会の発足はゴールデンウィーク後を予定している。なお事務局は内閣府が務める。