主な記事 詳細

過去の主な記事

分析の前提となる経済環境と省エネの想定

15年に採択されたパリ協定に基づき、わが国では今年6月に「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」(以下、長期戦略)が閣議決定された。この長期戦略では、50年までの温室効果ガス80%排出削減に向け、CCUS(CO2の回収・利用・貯留)等の新技術の活用が示されている。こうした新技術は、温室効果ガスの大規模削減の姿を定量的に示す既存研究においても、その役割が期待されている。しかしながら、こうした新技術は現状では未だ確立されておらず、50年までにどの程度実現可能となるかも不確実である。そこで、本分析ではまず、既存のゼロエミッション技術である原子力や再生可能エネルギーを活用し、50年にCO2排出量の
80%削減(13年の12・4億tから、2.5億tに減少)を達成する電力需給の姿を示す。
 分析にあたり必要となる前提条件として、30年までは経済産業省による「長期エネルギー需給見通し」(以下、需給見通し)の想定を利用し、30~50年については当所独自の想定を利用した。まず、電力需要の規模に影響を及ぼす経済環境と省エネについての想定を述べる。経済成長率は、30年までを需給見通しの年率1.7 %、
50年までを独自に同0.5%と想定した。日本銀行などの試算によれば、経済の実力を示す潜在成長率は足元で1%を下回る程度と指摘されている。今後さらに進む人口減少を考慮すれば、30年以降の経済成長率は現在の潜在成長率を上回ることはない―との前提に立っている。また、産業の姿は、30年までは需給見通しにおける実質GDP成長率の下、足元で進展するサービス化が継続すると想定した。30~50年にかけては、製造業、非製造業ともにその成長は鈍化することを見込んだ。しかし、人口減少・高齢化を背景とした医療関連サービスの拡大や、技術革新の進む情報関連産業の成長等により、第三次産業のシェアは拡大が続くことを想定した。省
エネは、実質GDPあたりでみた最終エネルギー消費量の低下とし、30年までは需給見通し並みの年率2.3%、30年以降は足元の20年間(996~15年)の平均である同1.3%で進展すると想定した。30年以降は省エネのスピードが鈍化することを見込んでいる。