西日本技開 ケニアで地熱開発新スキーム研究
西日本技術開発は、グレートリフトバレー(大地溝帯)に位置する地勢的特性から、地熱開発の有望国として知られる東アフリカのケニア共和国で、精密重力探査や地磁気地電流法などの従来手法と、AIによる地下温度推定などの最新技術を組み合わせた「ハイブリッド物理探査」により、新規地熱の開発スキームを円滑化させるための産学官共同研究を、九州大学大学院工学研究院やケニアのナイロビ大学、ケニア発電公社、同地熱公社などと開始する。既報のようにケニアは、主要電源(構成比約46%)となっている水力が、頻発する干ばつの影響で近年、稼働が極めて限定的となっているため、同国政府が、想定賦存量の高い同国中部のナクル郡オルカリア地帯に立地するオルカリアi地熱1~3号機(985年運開、各1.5万㎾)を、計5.1万㎾(1.7万㎾×3基)にリプレースする国家プロジェクトを計画。事業性を判断するための情報収集調査を、JICAの委託を受けた九州電力と西日本技術開発が、17年に行った経緯がある(西日本技術開発は、新規地熱となるオルカリアv=7000㎾×2基=の事業可能性調査も受託)。
今回、新たにスタートする「東アフリカ大地溝帯に発達する地熱系の最適開発のための包括的ソリューション」研究は「環境・エネルギー/生物資源/防災―の3分野において、世界をリードする日本の高い技術力とこれまでの研究実績を活かす」(JICA)ため、JICAが08年に創設した、科学技術振興機構、日本医療研究開発機構との共同事業「地球規模課題対応国際科学技術協力」プロジェクトの新規採択案件として、ケニアで豊富な調査経験のある西日本技術開発と、同分野に関して多くの研究実績を有する九州大大学院に委託して、取り組みを開始するもの。
両者は今年度中に、ケニア政府や前記団体などと研究プロジェクトの実施に向けた協議を行って、来年3月を目処に同国政府の合意を取り付けた上で、20年度からの5年間、ケニアにおいて、地熱資源の探査・開発・利用―の各段階で発生が予想される諸問題について、それぞれの解決手法を研究・開発し、最適な地熱開発スキームを構築すると共に、これらの研究開発を通じて現地の若い技術者・研究者を育成することで、ケニアと周辺諸国の地熱エネルギーの有効利用の促進につなげる。さらに研究の過程で、日本と異なりケニアの地熱系に特徴的な「アルカリ性の熱水で発生するスケール対策の手法確立も目指す」(九州大)考えだ。