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環境省 行動変容で社会課題解決へ新基盤を構築

 環境省は横浜市と連携して、人間の「行動」に着目した社会課題解決のための新たなプラットフォームを構築する。行動科学における「ナッジ(そっと後押しする)」や「ブースト(ぐっと後押しする)」といった知見を基に低炭素化を促すため、17年4月に日本版ナッジ・ユニット(BEST)を立ち上げて、産学官の連携による取り組みを推進しており、さらに新たな基盤を通じて、同取り組みの強化を図る考え。具体的には、「人間」「行動」といった切り口で、SDGs(国連が提唱する持続可能な開発目標)などの様々な社会課題を解決する官民協働のネットワーキングや、行動に起因した社会課題を抱える地方自治体と事業者との、マッチングのためのプラットフォームを構築する考え。今月18日には、同取り組みのキックオフとして、東京都千代田区の全国都市会館で、官民協働フォーラムを開催。行動に着目した社会課題の解決に向けて、既に取り組みを進めている民間事業者と地方自治体が事例紹介を行うと共に、個人・社会にとって望ましい行動様式の在り方や、同行動を妨げる要因、課題解決へのアプローチなどについて議論する。同省は、行動科学を活用した商品・サービスなどを提供する事業者や、それらのビジネスを支えるAI・IoT技術などを有する事業者などの参加を見込んでいる。 

 一方で、オールジャパンでの取り組みとなるBESTに対しては、小売りの全面自由化を契機に、電気事業者をはじめとしたエネルギー事業者が大きな関心を寄せている。BESTの一環として同省が17年度から実施する「低炭素型の行動変容を促す情報発信(ナッジ)等による家庭等の自発的対策推進事業」では、東京電力エナジーパートナーと電力中央研究所が、デロイトトーマツコンサルティングを中心とした事業に参画。エネルギー関連事業者として、家電・自動車などの利用における、ナッジを活用した低炭素型の行動変容に関する検討を進めているところ。同事業には、フィールド提供者として東北・北陸・関西・沖縄の4電力も参加。行動科学の知見に基づいて、省エネアドバイスなどを記載したレポートを一般世帯に送付し、その後の電気やガスの使用量への影響について検証している。比較対象を含めた全国50万強の一般世帯の協力を得て実施した17年度の実証では、紙媒体のレポートの送付開始から2か月間で、地域によって1~2%強の省エネ・省CO2効果を確認。また、スマートフォンのアプリケーションを通じた使用量の可視化や、使用量の変化に関するアラートメッセージの送信などにより、3%強の同効果があることが分った。これらの省エネ効果は、レポートの送付開始後に徐々に表れて、一定期間経過後に安定し、持続することが知られており、同省は今後も継続的に実証を行って、同効果の検証を進める。さらに、レポートを送付した世帯では、「エネルギー事業者が削減可能なエネルギー量を教えてくれる」「これからも契約を継続したい」などの回答の割合も高いことから、顧客満足度の向上といった観点から、省エネアドバイスなどのサービス提供が、エネルギー事業者のメリットになり得る―と指摘。ナッジを含む行動科学の知見に基づく取り組みの効果が、複数年にわたりリバウンドなく持続するか、効果を持続させ、さらに高めるにはどのようにすれば良いか―などについて、中長期的に実証し、コスト効率的な行動変容のモデルの確立を目指す考えだ。