東電HD 廃炉資料館が富岡町の学校教育の場に
東京電力ホールディングス(HD)が「福島第一原子力事故の事実と廃炉事業の現状を確認していただく場」(福島復興本社)として機能させるために、昨年11月に開館した廃炉資料館が、立地する富岡町の学校教育の場として使用されることが決定した。既報のように東電HDが、同町の旧エネルギー館に設けた同施設は、新・総合特別事業計画で示した「長期にわたる膨大な廃炉事業の全容を見える化し、その進捗をわかりやすく発信することは、国内外の叡智の結集と努力を継続させていく上で重要」との認識に基づき、整備したアーカイブ施設。館内では、1階に設けたエフ・キューブ(大規模視聴覚ビジョン)による廃炉スキームの詳細な説明や、2階を中心とした拡張現実(AR)技術を用いた福一事故の経過説明などのほか、被災時に実際に事故対応を行った複数の社員による体験談の聴講など、最新技術を用いて「福一事故を後世に伝えていくと共に、復興に向けた地域の安心につなげる」(同)ための様々な工夫が凝らされており、昨年末時点で3000人超が来館するなど、当初予想を上回る評判となっている。
開館初日に同施設を視察して、嶋津康・館長から、展示物に関する詳細な説明を受けた富岡町の宮本皓一・町長は「町として旧エネルギー館の活用を要請してきたこともあり、廃炉資料館が子どもたちやお年寄りが廃炉の状況などを知る場になれば」と期待。その上で、廃炉資料館を設立した東電HDの意図を踏まえ、同館を19年度より「町営小・中学校の生徒向け教育の場として使用する」(同町)ことを決めたもの。対象となるのは、各2校の町営小・中学校(東日本大震災・福一事故後は前記4校を一箇所に統合)に所属する全生徒(約20人)で、総合学習の一環として、同校から徒歩圏内にある廃炉資料館を教室に、廃炉の現状とスキームについて学習するほか「東電HDの協力を得て、出前事業としての聴講も予定」(同)している。開講は今年4月を見込んでおり、詳細について近く東電HDとの話し合いを開始する。なお、東電HDは今後「展示内容を随時見直して、より良い施設に育てていきたい」との意向だ。