エネ庁 建材などクリアランス金属再利用拡大
経産省エネ庁は来年度事業として、クリアランス金属を建材・工業用製品へ加工、再利用する取り組みを実施する。
現在進められている国内原子力24基の廃止措置に伴って今後、クリアランス物のうち特に金属の発生量が増加することが見込まれている。現状で年間1000t程度発生している同金属は、約10年後に10倍程度となる見通しで、廃炉作業を効率的に進めるには、同対象物の再利用を拡大することが重要課題となっている。また、このほど閣議決定された第7次エネルギー基本計画は、クリアランス物について、廃止措置の円滑化と資源の有効活用の観点から、フリーリリースに向けたロードマップを策定すると共に、電炉メーカーの協力も得て、より需要規模の大きい建材加工に取り組み、再利用先の拡大を進める方針を盛り込んだ。
これらの課題を受けて同庁は、23年度に取りまとめた「加工事業者等や再利用先によるクリアランス金属の取り扱いに関する留意事項」を基に今年度、再利用先を拡大したほか、フリーリリースに向けたロードマップを検討。これまでの取り組みを踏まえて来年度は、より需要規模の大きい建材を中心に、加工・再利用を実施する。クリアランス制度に基づき再利用が可能な対象物は、解体廃棄物の5%を占める一方で、原子力事業者は、同制度が社会に定着するまでの間、電気事業施設・発電所内施設、原子力関連施設で率先して再利用を行いながら、一般市場に流通することがないよう対応しているところ。同庁は、事業者と共に、早期の社会定着に向けた広報などに取り組んでおり、来年度は、有識者へのヒアリングなどを通じて、新たな地域への展開を含む、今後の効果的な広報手法を検討する。このほど、これらの事業を委託する事業者募集を開始した。
なお、既報の通り福井県は、クリアランス推定物を複数の原子力事業者から受け入れ、細断・除染・溶融・放射能測定などの処理作業を一拠点で集中して行い、原子力規制委員会の検認後にリサイクルする、原子力リサイクルビジネスの具体化を進める。検認前の溶融処理により廃棄物の汚染均一化が図られ、検認作業の効率化につながる事業として注目されており、規制への対応など事業化の見通しが得られたことから、県は来年度、同事業を行う新会社を設立する。県が過半数を出資し、嶺南全体の産業振興が図れるよう、事業を主導する方針を示しており、同事業を通じて、地元企業の廃炉ビジネスへの参入拡大を推進する考え。
