エネ庁 改革検証で電力供給の在り方再考指摘
経産省エネ庁は、このほど開催した電力システム改革を検証する会合で、国際環境経済研究所理事・主席研究員の竹内純子氏から、安定供給と脱炭素、デジタル化を支える電力供給の在り方を再度検討しなおすべき―との指摘を受けた。竹内氏は、これまでの電力システム改革を踏まえて「わが国の電力システム改革はなぜ行き詰っているのか、どう改善していくべきなのか」をテーマに、同改革で事前の検討が不十分であったことや、50年カーボンニュートラル目標、再生可能エネルギーの大量導入、原子力停止の長期化といった、複数の前提条件における変化が、現状の課題につながっていることを説明。欧州や米国での自由化は、経済成長が鈍化し、設備に余剰が生じた状態で行われた一方で、日本では原子力をほぼすべて停止させ、余裕がない状態で進めたことは反省すべき―との意見を述べた。
また、欧米での自由化は、必要な投資額が縮小したことが前提だったが、現在はカーボンニュートラル実現に向けて、大規模投資が必要な時代となっており、電力システム改革自体が再考の時期にある―との考えを提示。古い電力システム改革への決別を求めた上で、新な電力システムとして提唱される「ハイブリッド市場」について説明した。国内での長期脱炭素電源オークションも、同市場での役割りが期待できるが、一方で、〇費用の上振れには対応できない、〇20年を基本とする回収期間に建設期間は含まれない、〇供給力提供開始期限が設定され、遅延・未完のリスクを発電事業者が負う―などの特徴があり、新規投資促進策として機能するか否か―を検証する必要性を示した。
託送制度改革については、定額償却の仕組みや事業報酬率の観点で、投資が実際に促進されているのかを含めて、検証を行うことを求めた。さらに、システム改革の一番の難点は原子力の扱い―と指摘。自由化市場での新増設資金調達として、英国では稼働前からの投資回収を認め、売電価格は総括原価方式で決定する「規制資産ベースモデル」を導入しているが、原子力の利用を継続する場合は、そうした新規投資の資金調達に関する環境整備に留まらず、賠償制度、核燃料サイクル政策、立地地域の理解・同意を得るプロセスのあり方など、多様な検討が必要―とした。
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