エネ庁 原子力人材需給ギャップ見通し作成へ
経産省エネ庁は、原子力人材の育成・確保に関する方向性をまとめた。原子力人材の育成においては、「技術」領域の取り組みは相対的に進んでいるが、建設(ものづくり)をはじめとする「技能」領域では、東日本大震災以降の需要剥落により、職人技の継承や人材育成機会の喪失などが、大きな課題となっている。同庁は、原子力小委員会でのこれまでの議論を踏まえて、①需給ギャップの見通し作成、②ものづくり人材の育成、③流動性の向上―の3つの取り組みを通じて、建設における技能領域を中心に、各領域の強化を推進する考えを提示した。各取り組みでは、海外や他業界の事例を参考にすると共に、関係省庁・業界団体などとの議論も行って、さらなる強化・改善策を検討する。
国内の半導体や蓄電池分野では、業界団体などが主導して、今後の人材数目標と必要な施策を検討している。また仏国では、原子力産業のニーズと民間リソースを合致させるため、仏原子力産業協会が、今後10年で必要な雇用数や需給ギャップ、事業領域を調査・分析しており、これら国内外の取り組みを参考に、同庁は来年度から、国内での原子力分野における必要人材数の見通し作成に向けた検討を開始する。具体的には、産業界で求められる雇用数見通しを、同省と原子力人材育成ネットワークなどが提示。文科省と先進的原子力教育コンソーシアム(ANEC)が、その雇用数を輩出するため、教育側で必要な人材数を把握・分析するなど、省庁や業界団体が協働で取り組みを進める。
ものづくり人材の育成では、同省の事業として、産業界のニーズを踏まえた講座を開発・実施しており、今年度は1月に、バルブメーカーTVEの工場で、原子力向け鋳鋼バルブ設計技術や鋳造の技能・検査に関する講座を設けた。また、明日29日には、福井産業技術専門学院において、溶接・電気工事などの技能経験の少ない学生を対象に「溶接ものづくり講習」を試行。同省が主導して、溶接技能などで先進的な知見を有する大学などとの連携を通じ、原子力産業への興味・関心を喚起するカリキュラムの展開を図る。
震災以降の技能者の減少に加えて、国内全体で労働力人口が縮小する見通しの中で、アカデミアから産業界に輩出される人材だけでは不足する可能性があり、同庁は、他産業からの流動性の向上に向けた検討も必要―と指摘する。リスキリング講座の拡充や原子力産業におけるスキルの標準化検討、魅力的な産業としての発信強化といった取り組みを通じて、他産業、他分野からの流動化につなげる考え。