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国交省 既設ダムで水力新増設公募を順次実施

 国交省は、既設ダムにおける水力発電設備の新増設について、民間事業者などの参画方法や事業スキームの検討につなげるため、発電事業へ新たに参画する事業者公募を、来年度から実施する方針を固めた。気候変動への適応・カーボンニュートラルへの対応に向けて、治水機能の強化と水力発電の促進を両立させる「ハイブリッドダム」の取り組みを推進しており、ダム運用の高度化と共に、既設ダムでの水力の新増設による増電を目指す。今年度は、現在発電に利用されていない、ダム下流への補給水の活用により増電が見込める、同省所管の湯西川ダム(栃木県利根川水系)、尾原ダム(島根県斐伊川水系)、野村ダム(愛媛県肱川水系)の3ダムを対象に、ケーススタディを実施。新増設を見込む発電事業者の意見を聴取した上で、事業の実現可能性やスキームを検討し、事業者の公募要領案を作成した。
 これらの取り組みを踏まえて同省は、ケーススタディを実施した3ダム以外のダムも含めた、所管ダムでの事業性を来年度にも検討し、発電事業や地域振興へ新たに参画する、民間企業の公募を順次実施する。事業スキームについては、各ダムにおいて、まずは「商用発電」による事業の可能性を検討。商用発電が難しいことが想定される場合は、「管理用発電のPFI(民間資金などを活用した公共設備運営)」の可能性を検討する。既設の管理発電施設に関しては、老朽化などにより更新の必要性がある場合は「更新」、必要性がない場合は既設発電施設を「存置」し、発電に利用されていない放流水等を活用した発電施設を「増設」した上で、一体的に運用する形を基本として検討する考え。
 なお、ダム運用の高度化に関しては今年度、洪水後期放流の工夫や非洪水期の弾力的運用といった取り組みを、国、水資源機構が管理する73ダムで試行的に実施。降雨などの条件が整った18ダムにおいて、昨年末までに延べ30回の試行運用を行った。そのうち、16ダム延べ24回で、計1162万kWhの増電効果を得ており、運用高度化を本格実施する際の実施主体について同省は、各ダムにおいて発電事業者へ実施の意向を確認し、意向がある場合は発電事業者が、無い場合はダム管理者が担う方向性を示している。