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エネ庁 産業基盤強化が革新炉建設に不可欠

 原子力産業基盤の維持・強化に取り組む経産省エネ庁は、次世代革新炉の建設に向けた課題として、新設計画の開始から製品の調達・ものづくりなどの事業機会に至るまでに、相当程度の期間を要することを指摘し、建設・製造現場での空白期間における支援の必要性を示した。国内の原子力産業は、東日本震災以降も新規制基準対応や研究開発、海外機器の輸出などを組み合わせて、設計、機器製作、現場工事などのプラント建設に必要な工程を経験し、技術継承を図ってきた。一方で、同庁がプラントメーカーに行ったヒアリングからは、国内建設を通じてのみ、設計・製作の機会が得られる機器なども存在することが判明。プロジェクト不在の状況が継続することで、技術継承が困難となる懸念があり、関連人材の維持・確保も急務となっている。
 次世代原子炉の開発・建設にも不可欠となる、原子力産業基盤への支援態勢を強化するため、同庁は今年3月に「原子力サプライチェーンプラットフォーム(NSCP)」を設立。全国の関連企業400社に対する実態把握や経営支援の強化、NSCPの事務局を務める日本原子力産業協会と連携したウェブサイトの開設、米国への日系サプライヤ団派遣などに取り組んできた。このほど開催した原子力小委員会革新炉WGで同庁は、これらの取り組みを通じて、今後も国内産業基盤の維持・強化を図ると共に、次世代革新炉の開発・建設に向けた技術開発、サプライチェーン構築を目指して、引き続き対応策を検討する方向性を示した。
 国内では、970年以降に運開した原子力の多くで、原子力技術の国産化比率が90%を超えるなど、国内企業にその技術が集積されており、国内原子力の安定的な利用に加えて、生産設備・製造技術の蓄積による他産業への波及・発展といった、経済・雇用に貢献してきた。その後の東日本大震災以降は、再稼働の遅れや新規建設プロジェクトの途絶により将来の事業見通しが立たず、重要な技術を持つ中核サプライヤの撤退が相次いでおり、サプライチェーンの劣化が懸念されている。電気事業者においても、直近年度の新規制基準対応に関する支出が3322億円に上り、原子力関係支出の約2割を占めていることが指摘されている。