主な記事 詳細

過去の主な記事

東電HD グループ一体で浮体風力技術確立へ

 東京電力ホールディングス(HD)は、来年度からの実証を視野に、東京電力リニューアブルパワー(RP)とグループ一体で、浮体式洋上風力システムの技術開発を推進する。低コストで大量導入が可能な同システムの確立に向けて、20年度に実施したNEDOの委託事業に加えて、21年度からはグリーンイノベーション基金による3つのプロジェクトを実施。浮体式基礎製造・設置、洋上電気システム、運転保守―の各分野において、低コスト化要素技術の開発を進めており、来年度から28年度までの5年間をフェーズ2と位置付け、同要素技術を活用した実証に取り組む考え。
 東電HDは、浮体式風力の市場展開を目指して、低コスト化に向けた3事業を実施する体制を構築。21年には浮体式に特化した、グリーンイノベーション基金事業を担当する専門部署を新設すると共に、事業の進捗によって必要な技術を持った人材を社内外から積極的に登用している。東京HDと東電RPの役員の下で、技術開発担当箇所の各担当が、国内外での市場展開を目指した技術の標準化を検討。設計ノウハウや低コスト化に寄与するコア技術は、知財化などにより競争力として蓄積する考えで、現在、浮体設計3件、施工技術2件、保守管理1件の特許を出願中。
 浮体・係留システム・施工技術を中心とした要素技術開発では、15 MW級風車を搭載可能な「スパー型浮体」を主な対象に実施。浮体基礎・係留・施工費の25%低減を目指して取り組んでおり、今年度中にも、〇浮体の調達コスト16%程度削減、〇ドックに依存しない浮体の大量製造技術確立、〇係留システムの調達コスト4%程度削減、〇施工費5%程度削減―の達成を見込んで、最終確認を進める。
 洋上電気システムに関しては、東電RPを中心に、東北、中部、北陸、関西、四国電力、電源開発、九電みらいエナジーなどの発電事業者や、東芝エネルギーシステムズ、住友電気工業、古河電気工業、三菱電機の各メーカーが、要素技術開発を実施。将来の主ユーザーである電力会社のニーズを踏まえた浮体システム、洋上変電所・変換所、高電圧ダイナミックケーブルの各開発目標を達成する見通し。洋上変電所・変換所、高電圧ダイナミックケーブルに関しては、フェーズ2に向けて、実証すべき内容について検討中だ。
 東電RPが東芝エネルギーシステムズと共同で取り組む、監視・点検技術の高度化では、浮体の年間維持管理コストを㎾あたり0・34万円、係留系・ダイナミックケーブルでは同0・46万円を今年度達成する見通し。開発した保守管理手法については、東電RPのノウハウとして蓄積すると共に、フェーズ2での実証結果に基づき、現行のガイドラインが求める、浮体の現地立ち合い検査省略を実現。点検基準が規定されていない海外諸国への展開を目指す。