広域機関 業務多様化踏まえ運営理念策定へ
電力広域的運営推進機関は、15年4月の設立以降、業務内容が拡大、複雑・多様化している実情を踏まえて、①組織運営・ガバナンス、②人材確保・育成、③情報収集・発信機能といった、「3つの強化」に取り組む考えを改めて示した。同強化に関しては、20年11月に策定した「組織体制のアクションプラン」に基づき、推進する考えを示しており、このほど開催した運営委員会において、これまでの運営状況について報告すると共に、今後の課題を提示した。
20年以降、広域機関は容量市場のオークションをはじめ、FIT・FIP制度に関する賦課金の徴収、交付金の交付、太陽光パネルなどの廃棄費用の積み立て、災害等復旧費用の相互扶助制度、電力需給モニタリング―などの業務を新たに開始した。さらに、今年5月に成立した「GX脱炭素電源法」は、同機関に対して、経産大臣から認定を受けた、特に重要な送電線に対する貸付業務や、関係法令などの違反事業者に、FIT・FIP交付を一時留保し、積立金を管理する業務を追加。経産省の審議会においても、将来の電力需給に関するシナリオの策定や、予備電源制度について、同機関が実施することを求めており、これらの業務実施に向けて同機関は、検討・準備を進めているところ。
足元では、マスタープランを踏まえた広域系統整備計画への具体化をはじめ、交付金交付の全国スキームの導入、系統の効率利用の推進、供給計画による需給管理の高度化のほか、来年早々には初回の長期脱炭素電源オークションの開催を予定する。24年度は、容量市場における小売り事業者への容量拠出金請求や、発電事業者への容量確保契約金額の交付を含む実需給期間業務、需給調整市場では全商品の運用が開始。脱炭素化も踏まえて、安定供給を確保する仕組みが強化されるため、同機関は、業務拡大などに即した、計画的な体制整備、組織運営・ガバナンス強化が、ますます重要となっていることを改めて確認したもの。
同機関は、増加する業務を適切に実施するため、プロパー職員のほか、電気事業者に限らず広く関連分野から、実務経験や専門知識を有する職員を出向などで受け入れ、一体となって職務を遂行。多様な背景を有する職員が働くのを踏まえて、同機関が社会に対して果たす使命や、あるべき姿を整理した「運営理念」を取りまとめる考えを明らかにした。職員間の議論を経て、シンプルで訴求力のある運営理念を策定することで「職員の意識を高め、中立・公平な業務遂行を図る」考え。設立初年度に793者だった同機関の会員数は、今年11月時点で1837者と2倍を超えた。送配電・小売り・発電の複数グループに跨る会員数は100者を超えており、特に、小売りと発電の兼業は80者、小売り・発電・送配電の兼業は、40者に増加した。他グループと兼業している小売り事業者については、22年度の販売電力量に占める割合が9割弱と大多数になっている。