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東北電 高糖度トマトの育成スキームを構築

 東北電力の社内シンクタンク・研究開発センターは、近年の高温化に対応した高糖度トマトの育成スキームを構築した。多雪寒冷な東北は、設置環境によって暖房効率が低下することがあるため、関東以西の地域に比べてハウス栽培におけるヒートポンプ(HP)の導入率が低い傾向にあることから東北電は、東北の気候に適したHPの活用法として「冷房・除湿機能を利用した栽培法」の研究開発を進めている。1年を通じて需要家に人気のトマトを対象作物に、仙台市に設けたビニールハウスで18年から、同センターの電気利用Gが中心となって、東北電グループが擁する農業電化に関する豊富な知見を基に、HPの冷房・除湿・暖房を組み合わせた空調による「トマトの好適環境を維持する育成スキームのあり方」を検証してきた。その結果、トマトが体力を消耗しやすい夏の夜間に気温を下げることで「糖分の凝縮が進み糖度がアップする」ことを確認した。
 通常、トマトのハウス栽培は、①冬から春にかけて、②夏から冬にかけて―の2パターンで栽培されるが、東北電はこのうち、②の栽培分について、研究成果を踏まえて、夏季の午後9時~翌朝4時までHPを稼働させ、ハウス外よりも約3℃低い温度で育生したところ、10月中旬の収穫時に、4~6度が通常の糖度とされる中、8度超の高糖度トマトが多数収穫されたもの。さらに11~12月収穫分では10度を上回るものもあり、安定的・平均的に高品質トマトの生産が可能になることが判明した。トマトの市場価格は糖度に比例して高くなる傾向があり、JA宮城によれば東北産トマトの場合、店頭価格が300~400円の通常のトマトが、糖度が10%超になると2000円超に跳ね上がる―といい、高糖度トマトは全国的にも高い人気を誇っている。また、未曾有の高温が11月になっても続く現下の異常気象から、全国的にトマトの流通量が減少していることから東北電は、同スキームの普及を進めながら、グループあげて取り組む、中・長期ビジョン「よりそう next」で打ち出した「スマート社会実現事業の早期収益化によるビジネスモデルの構築」で、地域経済の振興につなげる。