東電HD 福一の廃炉に耐放射線カメラ導入
政府と東京電力ホールディングス(HD)が進める、福島第一原子力の廃炉作業に、光学機器開発のマッハコーポレーション(横浜市)が独自開発した「耐放射線カメラ」が導入される見通しだ。同カメラは、日本電気(NEC)の宇宙開発事業部で人工衛星に搭載する光学センサーなどの開発・設計に携わったマッハコーポレーションの赤塚剛文社長が、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で15年より開発を進めてきたもので、高い耐放射線性能が特長。現在広く用いられている海外製の同種カメラは、放射線を累積千グレイほど浴びると動作不良に陥るが、同社が開発したカメラは「2000倍以上の累積線量まで使用できることが実測で裏付けられた」(赤塚社長)ことから、福一の格納容器内で使用した場合、現行では数時間~1日程度のカメラの寿命を「理論上は1年以上に延ばせる」(同)という。開発に際しては福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想を促進する県の補助金を受けており、来年2月を目処に画素数向上などの高機能化も行う。福一の廃炉に協力する三菱重工業にも既に数台を納品しており、今後本格化する過酷な環境下でのデブリの取り出しなどの作業工程で、同カメラを使用する予定―という。
さらに、同カメラの評判を聞いた国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長も、今年7月に来日した際に同カメラを1台購入。実証試験で性能が確認できれば、さらに1500台の購入を希望する―としており、IAEAは同カメラを、核物質の軍事利用を防止する監視活動や、原子力のセキュリティなどに活用する考えだ。また、副次効果として、マッハコーポレーションは「センサーとレンズを除く、ほぼ全ての部品を浜通り(県東部の太平洋側沿岸地域)で調達する」考えであることから、地域経済への振興が期待できる上、JAXAと共同開発した技術が「人工衛星に搭載するカメラにも導入できるため、宇宙分野のニーズにも応えられる」という。同社は「性能を向上させて廃炉に貢献したい」と期待している。