電中研 火力脱炭素技術で石炭・ガスCO2同程度
電力中央研究所エネルギートランスフォーメーション研究本部プラントシステム研究部門の泰中一樹・主任研究員は、30年を想定した火力の脱炭素化技術に関して、経済性・環境性の観点から評価を行った結果、CCS(CO2回収・貯留)技術の利用や、化石燃料由来水素(H2)・アンモニア(NH3)の製造・利用により、石炭(ガス化用石炭、一般炭)と天然ガスのCO2排出原単位は、同程度になることなどを明らかにした。経産省エネ庁が新設した「カーボンマネジメント小委員会」の初会合に出席し、火力の脱炭素技術として、社会実装が期待されるCCSや、H2・NH3といった脱炭素燃料の利用に関する電中研の研究成果を紹介したもの。
同研究では、CCSなどの脱炭素技術を、火力に適用した場合の発電コスト、CO2排出削減量に対する発電コスト増加分、CO2排出原単位、CO2地中貯留原単位、化石燃料消費原単位を試算し、経済性・環境性の観点から評価を行った。その結果、発電コストについては、天然ガス、石炭火力のいずれにおいても、直接利用、CCS技術利用、NH3製造・利用、H2製造・利用―の順に低く、CCSではCO2輸送・地中貯留費、H2・NH3においてはH2・NH3製造設備・運転維持費、燃料輸送費が発電コストを増加させていることが判明した。現状の想定技術では、NH3はH2と比べて、燃料輸送費が低いため、発電コストも低くなることが分かった。
環境性に関する評価では、石炭は天然ガスと比べて、直接利用した場合のCO2排出原単位が大きいが、CCSなどの脱炭素技術の適用により、大きな差がなくなることを明らかにした。その理由として、石炭のCO2排出量は、採掘から輸送までの上流が少なく、利用時に多い傾向にあり、脱炭素技術により利用時の排出量が大きく削減されることを提示。一方で、天然ガスのCO2排出量は上流が多く、利用時は少ないため、石炭との差が生じにくい―ことを挙げた。
また、脱炭素技術のうち、CCS利用は、経済性や環境性において相対的に評価が高いが、CCS技術については、その実現性や経済性の動向を注視する必要がある―と指摘。さらに、CCS、化石燃料由来H2・NH3では、CO2貯留可能量や化石燃料資源量に限界があるため、カーボンニュートラルの実現には、再生可能エネルギーや原子力などの脱炭素電源と、脱炭素電源由来のH2・NH3の利用へつながる、電源構成のシナリオ作成が重要―との考えを示した。