東北電、中部電 農業労働力確保の官民実証
東北電力と中部電力は、高齢化や担い手不足などにより全国的な社会課題となっている「農繁期の人手不足」に対応した、地域農業の振興と交流人口の拡大を目指して「企業連携による農業労働力確保・地域交流人口拡大に向けた実証実験」を開始した。同実証は、農水省が先月末に公表した「食料・農業・農村基本法」の四半世紀ぶりとなる改正案の中で打ち出した「農的関係人口」という新しい概念(都市住民を「多様な担い手」と位置付け、農業活動への参加を通じて持続的な地域の発展につなげる)の履行を目指す試行で「地域と共に発展する」を社是とする両電力が、山形県やJA長野、JR東日本、NTT東日本、KDDIとの官民共同で、初の試みとして実施する大規模社会実験。具体的には、農繁期の人手不足を補うために現在、短期間アルバイトの募集で広く利用されている「1日農業バイトアプリdaywork」に法人向け利用機能を追加。実証に参加する5社が、地域貢献として社員に対して農作業への参加を呼びかけ、副業またはボランティアとして繁忙期に従事することで農業労働力の確保と人材の有効活用につなげる。今回の実証では山形、長野両県での実験となる。
実証に参加する5社のうち、JR東とNTT東は副業を認めているのに対して、東北電と中部電、KDDIは「副業を原則として認めていないか、社内に限っている」(KDDI)ため、3社の社員はボランティアでの参加となる。また、交通費と宿泊費も自己負担となるため、両電力ともに山形、長野両県内や近隣に住む社員の参加を想定している。実証への参加を呼びかける各社の社員数は、東北電がグループ企業を含めた約1.2万人、中部電が長野県内の在住・在勤社員約1600人のほか、JR東が4.6万人、NTT東が3.4万人、KDDIが1.2万人をそれぞれ予定している。実証期間は今月から12月末までの半年間で、この間、社員の参加率や取り組みとしての課題、問題点などを検証して、制度化の途を探る。農水省のほか、経産省や総務省も今回の実証には注目しており、今後、他電力の協力を得て全国大で実証を展開して、早期の社会実装につなげる―考えだ。