政府 電力とグローバルサウスでインフラ整備
政府は電力などの協力を得て、インドや東南アジア諸国連合(ASEAN)、大洋州などのグローバルサウス諸国で、30年までに750億㌦(約9.9兆円)超の「質の高いインフラ整備を推進する」(松野博一・官房長官)。ロシアによるウクライナ侵略の長期化や、コロナ禍の収束などの国際情勢を踏まえて、松野官房長官が議長を務める首相の諮問機関である経協インフラ戦略会議がこのほど、取り組みの指針となる「インフラシステム海外展開戦略2025」を改定。その中で、日本の強みである質の高いインフラ整備の推進に注力することを改めて確認すると共に、ダムや風力などのインフラ設備の新規受注やリニューアル、スマートシティの構築など、各国が有する社会課題の解決と経済発展につながる支援に積極的に取り組むため、戦略をブラッシュアップした。改定された新戦略では「脱炭素社会に向けたトランジションの加速」を重点戦略に位置付け、オールジャパンで日本の電力やメーカー、ゼネコンなどが有する高レベル脱炭素技術の海外への技術供与を支援する。
さらに近年、市場としての価値が高まっているグローバルサウスにも注目し、今年で友好協力50周年を迎えるASEAN諸国に加え、インドや太平洋島嶼国なども重点市場に位置付け、海底ケーブル事業に関する国際受注などを狙う。同様にエジプトでは、新規陸上風力プロジェクトへの事業参入を視野に入れており、官民一体となったプラットフォームの構築、JICAなどを通じた民間への情報提供やマッチング機会の提供などにより、相手国でエネルギーの安定供給を支えると共に脱炭素化にも貢献する。目玉となる「脱炭素社会の実現に向けたトランジション協力」では、日本のカーボンニュートラル政策・制度、次世代脱炭素技術の紹介と導入支援、長期戦略やマスタープランの作成、研修プログラムの立案による関連人材の育成、パワープール(アフリカで国際連系線を通じて域内でグリーンエネルギーを共有する仕組み)の構築に向けた制度整備などを進めるほか、JOGMECとも連携して、水素やアンモニアなどの新技術分野のプロジェクトを貿易保険で支える新スキームの導入も目指す。これらに加え、ロシアによるウクライナ侵略を教訓に、国際プロジェクトを受注した日本企業が、カントリーリスクなどによって予見困難な事態に見舞われたケースを想定した対応体制の整備も進める。