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東電HD 風評抑制の飼育試験で科学的知見

 政府方針の「ALPS処理水の今春~夏頃の海洋放出」を受けて、東京電力ホールディングス(HD)が風評被害抑制のため、福島第一原子力の正門近くに設けた飼育実験施設で昨秋より行っている海洋生物飼育試験の結果、放出する処理水と同じ量のトリチウムを含んだ海水で育成したヒラメの体液にトリチウムが蓄積されない―ことが明らかになった。既報のように同試験は、東電HDが福島県栽培漁業協会などの意見に基づいて昨年9月より行っているもので、処理水を含んだ海水と、通常海水の両方で「常磐もの」の呼称で人気のヒラメなどを飼育し、双方に差が出ないことをデータで明らかにすることで、世界の原子力が放出している処理水の安全性をアピールするための取り組み。

 同社が実験に使用しているのは、魚類がヒラメ(幼魚)約800尾、貝類がアワビ(稚貝)約800個で、そのほか海藻類としてアオサやホンダワラが数kg程度で、いずれも県栽培漁業協会から提供を受けた。これらを、福一周辺の通常海水と、同海水で希釈したALPS処理水でそれぞれ飼育し、生体に及ぼす影響の有無などを検証している。

 時系列では、10月初旬に循環式の水槽5系統のうち2系統に、ALPS処理水を添加して「海洋放出する処理水と同程度」となる1500ベクレル/ℓとし、さらに「実際に放出されるトリチウム濃度(放射線影響評価結果における放水トンネル出口周辺のトリチウム濃度)で飼育試験を行うのが有効」(東電HD)との判断から、11月末より「追加試験」として、放出直後に海中で希釈されることを想定した30ベクレル/ℓにトリチウム濃度を調整した1系統も設けて、通常海水の2系統との比較を行った。その結果、1500ベクレルの水槽では、ヒラメの体内トリチウム濃度が約24時間で、海水の濃度より1割低い1100ベクレル程度まで上がり、その後横ばいになるものの、同ヒラメを通常海水に戻すと、同じく24時間で検出できないくらいまで値が下がり、ヒラメの体液にトリチウムが蓄積されないことが確認された。同結果は、09年に環境科学技術研究所(青森県上北郡六ヶ所村)が発表した「陸・水圏生態系炭素等移行実験調査」の報告書の分析結果と同じで、今回の試験によって改めて科学的知見が裏打ちされた形だ。

 さらに東電HDは「ヒラメの体内に入ったものが分解されて筋肉などに取り込まれるまでに数か月かかる」(同)という「有機結合型トリチウム」についてのデータも現在取得中で、分析が済み次第、データを公表する考えだ。飼育試験の様子は、ユーチューブのオフィシャル「海洋生物飼育試験ライブカメラ」で24時間×365日、水槽内に設けた定点カメラを通じて中継しているほか、オフィシャルツイッターでも毎日「飼育日誌」の名称で、試験の詳細を伝えており、そのほか東電HDの処理水ポータルサイトでも、データやライブ画像を公表するなど、インターネットを通じて実験の詳細やデータを広く世界に発信している。