復興庁 福一などを周遊する新復興事業立案
復興庁は、福島復興に向けた新たな取り組みとなる「歩いて楽しむ復興探求事業」を今年度から開始する。同事業は、英国発祥のフットパス(住民が昔から利用している古道を再整備して、沿道の歴史的な場所や遺構などを周遊・見学するための遊歩道)にヒントを得て、避難区域が設定されている県内の12市町村間を周遊する専用歩道を整備し、国内外から広く利用者を誘致して「歩きながら自身の眼・耳・脚で復興の進捗状況を認識してもらうと共に、各地の魅力に触れることで地域のにぎわい創出につなげる」(同庁避難地域復興課)という復興支援のための取り組み。 同庁が県に委託して整備する専用歩道は、同プロジェクトに参加する大熊町・双葉町に立地する福島第一原子力、楢葉町に立地する福島第二原子力、富岡町の東京電力廃炉資料館、楢葉町と広野町に跨るJヴィレッジなどを結ぶルートをイメージしており、各施設の見学やワークショップ、イベントの開催により、近年人気を集めているロングトレイルハイカー向けコースとして利用者の拡大を図る。
取り組みが先行する英国では、総延長20万kmのフットパスが全国大で整備され、国民に広く利用されて地域経済の活性化と振興に大きく貢献している。同国での成功例を参考に復興庁は、来年度からの事業開始に先駆けて今年度中に、田村、川内、葛尾の3市村に5~6kmのテストコースを設け、利用者に実際に周遊してもらう試行を実施する。さらに同試行の成果を検証した上で、来年度以降、他市町村に新たなコースを設け、将来的には環境省が整備したロングトレイルハイカー向け周遊路「みちのく潮風トレイル(青森県八戸市~福島県相馬市)」と連結させて、福島の復興支援や風評の払拭に加えて「太平洋沿岸市町村の経済振興にも寄与するプロジェクトとして機能させる」(同)。
同種の復興支援プロジェクトである、環境省の「福島環境再生見学ツアー」や、福島県の「ホープツーリズム」「教育旅行」が、いずれもコロナ禍の中でも好評なことから復興庁は、初の試みとなる日本版フットパスプロジェクトを4年計画で事業化させたい―と期待する。なお、県内では、いわき市が事務局を務める「うつくしま浜街道観光推進会議」が、いわき市~新地町を結ぶ専用歩道「ふくしま浜街道トレイル」の整備を進めており、23年度中に完成予定だ。