エネ庁 送配電費用の着実な回収へ検討加速
経産省エネ庁は、一般送配電事業に要する費用の着実な回収の在り方について、年内を目処に検討を進める。人口減少、省エネルギーの進展などにより、30年度の電力需要は19年度とほぼ同レベルであることが見込まれる中で、再生可能エネルギーの導入拡大やレジリエンス強化への対応に加えて、高度経済成長期に整備した送配電設備の老朽化により、送配電設備の整備・対策、更新が必要となっている。各エリアにおける安定供給の中核を担う一般送配電事業者は、これらの事業環境の変化に対応するため、計画的・効率的に設備投資を行っていくことが求められている。
一方で、一送電各社の21年度収支における経常損益は、「三次調整力②(FITインバランス特例制度に起因する再エネ予測誤差に対応するための調整力)」の差額負担などの影響で大幅に悪化し、北海道、中部両電力は赤字決算となった。また、20年度収支でも節電・省エネに加え、新型コロナウイルス感染症の影響などによる需要減から、北陸・沖縄両電力以外の8社は、実績収入が想定原価(想定収入)を下回り、特に北海道、関西両電力は5%以上減少。直近3年間の実績収入(平均)でも、沖縄電を除く9社が想定原価を下回った。こうした中で、23年度から導入される新たな託送料金制度は、必要な投資と効率化の両立を図るためのインセンティブ設計となっており、今後、一送電が円滑に事業を実施するための費用回収の在り方について同庁は、幅広い観点からの検討が必要―との考えを提示。送配電事業に要する費用を巡る状況、効率化の取り組みをはじめ、レジリエンスの強化、再エネ導入拡大などの状況について、関係機関と連携して定期的に確認すると共に、発電側課金の在り方、再エネ賦課金の活用や最終保障供給に要する費用の着実な回収について検討を加速するもの。
電力システムの強靱化、脱炭素化、効率化に向けて今後、一送電の果たす役割が増す中で、例えば送電線の増強が再エネ導入とレジリエンス強化に同時に寄与する場合の便益の切り分けや、最終的に需要家負担となる託送料金と再エネ賦課金を原資とする交付金の在り方といった、それぞれの便益に応じた費用負担―などの視点から検討を進める。