東電EP EVタンカー普及事業に高い評価
東京電力エナジーパートナー(EP)が、昨年9月に神奈川県川崎市、商船三井グループの旭タンカーと交わした協力協定に基づいて取り組みを進めている「世界初となるEVタンカーの普及促進事業」(東電EP)が、全国の船舶事業者から注目されている。同事業は「運輸部門において未開発分野となっている」(国交省)という、ゼロエミッション電気推進船の普及による海運インフラサービスの構築―を目指したもので、市が20年に策定した脱炭素戦略「かわさきカーボンゼロチャレンジ50」の目玉となる官民プロジェクト。旭タンカーが建造したEVタンカー「あさひ」は全長62m、全幅12m、重量492tで、計1277㎥の重油を積載できる。2室の船内バッテリールームに設けた大容量リチウムイオンバッテリー(容量3480kWh)からの電力でモーターを駆動して航行と離着岸、荷役を行う。
東電EPは、同バッテリーの開発に技術協力して、電気効率の向上に加え、重量・サイズの圧倒的軽減を可能にすると共に、川崎港の夜光けい留さん橋に整備した同タンカー用給電ステーションの開発・施工・保守保安管理なども担務している。先月下旬より開始した給電と東京湾内での船舶への重油の輸送はいずれも順調で、電化により温室効果ガスのCO2、粒子状物質(PM)、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)の排出がないゼロエミッションの実現を果たすと共に「これまでのように燃料である重油流出のリスクが全くないために、海洋環境にも優しい」(旭タンカー)という様々な副次的メリットや付帯効果が期待できる。
加えて、ディーゼルエンジンが不必要なために騒音や振動、オイル臭の発生もなく、暖機運転も不要で、操船やメンテナンスも「メーカー自らが各装置や機器を遠隔監視システムでチェックするスキームを採用」(同)しているため、従来のタンカーに比べて数段簡便で、乗務員の労働環境の改善につながっている―と指摘する。国交省によれば「外国の港に寄港できる外航船と異なり、国内の貨物輸送専門の内航船は労働環境が厳しい」といい、そのため「高齢化に加えて若年層の離職率も高く、船員の確保は業界の大きな課題となっている」(全日本海員組合)という。船舶関係者も、東電EPの取り組みを「内航船員の労働環境を劇的に変えることにつながり、ゼロエミッションはもちろん、海洋環境・水質の改善や後継者対策にもつながる価値のあるプロジェクト」として評価し、取り組みに注目している。