地熱協 賠償責任保険団体制度で補償を拡充
日本地熱協会は、東京海上日動火災保険と共同で、同協会会員向けの「地熱発電業務賠償責任保険団体制度」を創設した。16年に東京海上日動が、温泉事業者への損害賠償責任などを補償する「地熱発電業務賠償責任保険」を発売して以降、20年には政府による50年カーボンニュートラルが宣言され、地熱開発に関する自然公園法、温泉法、森林法などの規制緩和が進展。一方で、新規の地熱開発では、周辺の温泉施設における湧出水の減少や、泉質・温度変化の影響が懸念され、温泉事業者など関係者との合意形成も長年の課題となっている。そうした状況を踏まえて中部、関西、九州3電力をはじめJパワー、東北自然エネルギー、東電用地、シーエナジー、きんでん、西日本技術開発、Jパワーハイテックなど国内80社の地熱事業者が正会員として加入する同協会は、正会員または同会員が出資する特別目的会社を対象とした保険を、東京海上と共同で開発した。
同団体制度は、地熱開発業務に関連して、周辺温泉の湧出量の減少、泉質や温度の変化が発生した場合の原因調査費用と、温泉事業者への損害賠償責任を補償するもので、16年に販売開始した地熱保険をさらに充実させた内容となっている。幅広い補償内容と割安な保険料水準、さらに保険の引き受け対象を拡大―したのが特長で、新たに「温度の変化」を補償の対象としたほか、支払い限度額を500万円に設定した場合の保険料を10万円台に抑え、損害賠償責任においては最大1億円まで補償するプランも提供。これまで引き受け対象外としていた、掘削深度の浅い地熱開発事業者やバイナリー発電事業者についても同対象に拡大しており、地熱事業のあらゆるフェーズで事業者の賠償資力を補完するのに加え、地熱事業との因果関係が不明瞭なケースにおいても、原因調査費用を同保険で補償することで「地熱事業者、温泉事業者双方が安心してそれぞれの事業に携われる環境構築を支援する」(東京海上日動)。