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「ゼロエミッション火力発電の実現に向けた電力中央研究所の取り組み」

 ▼ 火力発電を取り巻く動向と課題

 20年10月に当時の菅義偉首相から「50年カーボンニュートラル」の実現を目指すことが宣言され、さらに21年4月に開催された気候変動サミットでは、30年において温室効果ガスの13年度からの46%削減を目指すことが宣言された。これらの宣言を踏まえた第6次エネルギー基本計画が21年10月に閣議決定され、その中で示された30年度の電源構成では、水素・アンモニアによる発電量が1%程度、再生可能エネルギー(以下、再エネ)による発電量が36~38%程度、化石燃料を使用した火力による発電量が41%程度とされている。19年度における化石燃料による火力の発電量の実績値は76%程度であり、大幅な削減目標となっている。
 一方、21年6月に内閣官房が発表した「50年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」においては、50年における水素・アンモニアによる発電量が10%、再エネによる発電量が50~60%、原子力発電とCO2回収を前提とした火力発電を合わせた発電量が30~40%と想定されており、いずれもチャレンジングな数値となっている。これらの目標値や想定値を踏まえると、今後の火力発電に望まれる役割として、水素やアンモニアといった脱炭素燃料による発電や、CCUS(CO2の回収、有効利用、貯留)/カーボンリサイクルを前提とした化石燃料による発電を行うことによる供給力の確保が挙げられる。さらに、今後も太陽光発電や風力発電といった変動型再エネは増加していく見込みであるが、火力発電には再エネの出力変動に対する調整力としての役割とともに、系統安定化のための慣性エネルギーを供給する役割も期待される。以上のことから、今後の火力発電に対する課題として、再エネと協調したゼロエミッション化を進めることが必要と考えられる。
 以降では、電力中央研究所(以下、当所)で検討を進めているゼロエミッション火力発電(以下、ゼロエミ火力)の実現に向けた取り組みについて紹介する。