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国交省、東北電 鳴瀬川ダム整備事業が進展

 東北電力が発電参加する、国交省の「鳴瀬川総合開発事業」が、着工に向けて大きく前進した。同事業は、宮城県加美町に多目的ダムとなる鳴瀬川ダムを整備して、同ダム下流に東北電が鳴瀬川水力(2300㎾)を新設すると共に、宮城県が管理する既設(981年完成)の漆沢ダムを治水専用に改修し、両ダム合わせて6360万㎥(鳴瀬川ダム4560万㎥、漆沢ダム1800万㎥)の貯水量を確保して、鳴瀬川水系の治水を図るための総事業費1450億円の大型プロジェクト。同事業は当初、県の主導で984年に実施計画調査がスタートしたが、公共事業の見直しにより事業が休止。その後、13年に政府の「ダム検証に関わる対応方針」に基づき、名称を鳴瀬川総合開発事業に改めると共に、事業主体を国に替えて、事業を継続することになった。
 東北電は、国交省との協議を経て、昨年12月に同事業への発電参加を決定。現在は東北地方整備局の主導で、国有林のほか私有地を含むダムの用地確保に向けた準備を進めている。こうした取り組みの一環として同局はこのほど、地元の地権者で組織する「鳴瀬川ダム補償対策地権者会連絡協議会」と、鳴瀬川ダム新設と漆沢ダムの洪水調節専用化に伴う「用地取得に関する基準価格」について合意すると共に、損失補償に関する協定書に調印した。協定締結を受けて今月より、用地確保に向けた本格的な協議がスタートすることから、同局は今年度中に用地調査、地質調査、環境・水質調査、ダム・関連施設に関する設計の検討―などを行った上で、22年春に建設用道路の工事に着手する。
 ダム本体の着工は28年頃、事業完了は36年度中をそれぞれ予定しており、同様に東北電が新設する鳴瀬川水力も、28年度着工、34年度運開―を目指す。なお東北電は、ダム建設費用のうち5800万円を負担する。既報のように同社は「風力を主軸にできるだけ早期に、再生可能エネルギー施設で200万㎾の開発を目指す」方針を打ち出しており、鳴瀬川水力の新設事業もその一環となる。また、国交省も同事業を、i‐Construction(設計、施工、維持管理に至る全事業プロセスでのICT=情報通信技術=導入による生産性向上策)の取り組みを先導するモデル事業と位置付けており、月内を目処に用地業務のほか「将来的に工事監督業務を行うためのサテライト・オフィスを町内に開設する」(同局鳴瀬川総合開発工事事務所)という。