JAEA FNCA最優秀研究チーム賞を受賞
日本原子力研究開発機構(JAEA)原子力基礎工学研究センターの永井晴康ディビジョン長らの研究グループを中心とした、アジア原子力協力フォーラム(FNCA)気候変動科学プロジェクトの日本チームは、このほど開催されたFNCA大臣級会合において、最優秀研究チーム賞を受賞した。同チームは、JAEAの研究グループをはじめ、国立環境研究所地球環境研究センターの梁乃申室長、東京大学総合研究博物館タンデム加速器分析室の松崎浩之教授、茨城大学の堅田元喜講師(現在キヤノングローバル戦略研究所主任研究員)で構成。アジア諸国の原子力研究機関に対して、知見の提供と技術移転を行い、国際協力研究を進める体制を構築した日本チームの業績が高く評価され、同賞の受賞につながった。FNCAプロジェクトに参加するアジア諸国の研究チームは、原子力研究機関を中心に構成されており、放射性物質についての知見や分析技術は有しているものの、放射性炭素の分析技術、炭素循環の解明、温暖化研究への応用に関する研究実績は無かった。
一方でJAEAは、原子力分野で培った放射性核種の分析・環境動態解析技術を活用して、陸域生態系における炭素循環を解明する研究を進め、これまでに放射性炭素の分析技術を開発。同技術を活用した研究手法を地球規模に展開し、様々な気候帯や生態系における炭素循環を解明することを目指して、FNCAプロジェクトに参加しており、JAEAが開発した炭素循環の解明の手法、知見、それらに必要な技術をアジア諸国の研究チームに提供し、国際協力研究を進める体制を構築するため、同日本チームは、アジア諸国チームの若手研究者を受け入れて研修を行うと共に、炭素循環の解明手法のガイドライン(GL)を作成した。
同GLは、土壌の採取、土壌試料の処理をはじめ、放射性炭素の加速器質量分析法による測定・試料調製などの実践的手法を網羅。また、炭素循環研究において広く用いられる放射性炭素の分析結果の報告方法の紹介や、同位体を利用した研究手法の適用例として、日本の森林生態系において実施した結果の解説も載せており、同GLを通じてアジア諸国の研究チームは、放射性炭素の分析技術を活用した炭素循環解明のための研究を独力で行うことが可能となった。今後の国際協力研究により、アジア地域での陸域生態系の炭素循環に関する基礎データが整備され、温暖化対応研究の課題解決につながることが期待されている。