消防庁 東電設計考案のタンク防災策の普及推進
総務省消防庁は、近年クローズアップされている「大規模災害時における危険物貯蔵タンクの津波・水害リスク」への対応策として、東電設計が考案した「危険物屋外貯蔵タンクの津波・水害による滑動等対策工法」の普及を目指した取り組みを、今年度より開始する。11年の東日本大震災の際、湾岸域の小規模屋外貯蔵タンクが津波によって移動・転倒し、石油類が流出する事例が多数発生したことによって顕在化した同問題は、台風・豪雨の激甚化によりその後、全国的な発生が懸念されている。そのため最近では、耐災害性の高い「プレストレストコンクリート工法」を用いてタンクを建設する例が増えているが、同工法は「津波への効果が期待される半面、コスト高が課題となっている」(同庁危険物保安室)ことから、汎用性の高い代替策を求めて消防庁は、東電設計に委託(静岡市消防局との連携研究)して、17~19年度に、アンカーなどによってタンクの滑動や漂流を防止・軽減する独自工法の研究を行った。
その結果、東電設計が開発した滑動等対策工法は「低コストかつ簡易な手法で既設タンクの耐災害性を強化できる優良技術」(同)と評価・判断されたことから、実用化に向けた技術的検討を今夏より本格化させることになったもの。同工法は、小規模タンクの風対策に用いられているアンカーボルトなどの既存技術をベースに、既設タンクの外側にワイヤや外壁を整備して、浸水時におけるタンクの滑動・漂流を防止するもので、特長として、〇供用中のタンクでも施工が可能、〇低コストに加えて溶接が不要で安全性も高い、〇既設設備の耐震性能に影響を与えない―などの優れた特性を有する。同工法の実装に向けて、消防庁はこのほど、計画推進組織となる有識者グループ「屋外貯蔵タンクの津波・水害による流出等防止に関する調査検討会」(座長=辻裕一・東京電機大学工学部機械工学科教授)を創設。今後、同会が中心となって工法の実用化に向けた検討を進めながら、21年度末までに最終報告書をまとめ、同報告書を踏まえて消防庁が、屋外タンクの津波・水害対策工法に関する指針を策定して、同工法の普及を後押しする。