東電HD 廃炉技術にアイソトープ協が奨励賞
東京電力ホールディングス(HD)が、福島第一原子力炉内のデブリ分布状況の測定に導入予定の「新型シンチレータ(放射線を光に変換する素子)を利用した高放射線量の計測スキーム」が、日本アイソトープ協会の今年度奨励賞に選出された。同技術は、東北大学未来科学技術共同研究センターの黒沢俊介・准教授(放射線物理学)のグループが、東電HDと情報を交換しながら19年から研究を進めているもので、放射線を「より強い光に変換して、長さ約20mの光ファイバーでノイズの影響の低い場所に伝送した後、検出器で電気信号を読み取る技術」(黒沢准教授)。これにより、これまで測定が困難だった「福一炉内のような非常に高いレベルの放射線量も計測できる」という。同スキームを用いて、光ファイバーの長さを100mにまで拡張した上で、新型シンチレータを搭載した遠隔操作ロボットを用いれば「福一炉内のように1時間あたり1000シーベルトの高線量下でも測定が可能で、これによりデブリ分布の把握が行える」という期待が持たれている。
アイソトープ協会は、同技術のこうした優れた特性を高く評価し、放射線利用研究において「最も顕著な成果を示し、さらに将来の利用拡大への寄与が期待できる研究」を称える年次顕彰に同技術を選定したもの。なお、同技術の実用化・商用化について黒沢准教授は「至近年内に実際に福一に導入して、廃炉作業をサポートしたい」との意向だ。