電力各社 ダムの洪水調節機能強化で官民会議
電力各社は来年度から、全国全ての1級河川から取水する自社ダムの「洪水調節機能強化」を目指した官民共同の取り組みを開始する。昨年10月に上陸し、関東・甲信・東北地方を中心に浸水などの甚大な被害をもたらした台風19号の際に「既設ダムによる洪水調節が、下流域の浸水被害を減らすことに効果を発揮した」(国交省)ことから、有効な治水対策の一つとして「全国の主要水系ごとに、官民が協力してハード・ソフトの両面で一体的な対策に取り組む」(同)もの。昨年12月に政府の検討会議がまとめた「既存ダムの洪水調節機能強化に向けた基本方針」に基づき、同省が20年度より、電力各社の協力を得て、具体的な取り組みを開始する。第1弾としてこのほど、近畿地方整備局が事務局となって、同局管内の全ての1級河川(計10水系)の河川・ダム管理者と、ダム参画利水者を迎えた「既存ダムの洪水調節機能強化に向けた検討会議」を創設した。
同会議には、電力から中部、関西両電力とJパワーが参加。21日に大阪市の大阪合同庁舎第1号館第1別館で行われた発足会議で、対象となる新宮川、紀の川、大和川、淀川、加古川、揖保川、円山川、由良川、九頭竜川、北川―10水系の計91ダムを管理する近畿整備局や府県市町、土地改良区と共に、会の規約と今後の検討テーマやスケジュールなどについて協議した。官民の協力による本格的な取り組みは来年度からとなるが、実務レベルで協議するテーマ別WGなども設けて、出水期前の今年5月を目処に、各水系ごとのハード・ソフト対策の工程表作成、大規模洪水時における操作要領の策定、さらに有事の際の情報連絡体制の整備(「事前放流実施演習」の履行も含む)などを進める。
国交省は、近畿整備局による同会議をモデル組織に今後、各地方整備局が各水系ごとに、ダム管理者となる電力などを迎えた官民検討会議を立ち上げて、〇現在整備中のダムの着実な完工、〇嵩上げなどによる既設ダムの再生、〇水系ごとの治水協定の締結―などについて取り組む考えだ。